自由度の高いキャリアのつくり方
女性のキャリアデザイン論

第3回 自由度の高いキャリアのつくり方

前回は、不確実性の高い人生を歩むうえで、転職市場から評価されるスキルを身につけて、キャリアの自由度を高めることの大切さをお伝えしました。

今回は、「自由度の高いキャリア」をつくるための具体的な方法、仕事の選び方をご紹介します。就職活動では、どのような会社を選ぶべきなのでしょうか。

主体的にキャリアを形成できる職場を選ぶ

明確な売りとなるスキルを若いうちに身につけて、「自由度の高いキャリア」を形成する――これによって、ライフイベントにも柔軟に対応しながら、望むキャリアを歩み続けることができるでしょう。

ただし、明確な売りとなるスキルの獲得は、一朝一夕でできるものではありません。仕事で高い価値を出せるようになるためには、相応の時間と努力が必要です。そのためには、育児や介護などのライフイベントを迎える前で、時間に余裕のある若い時期に、仕事に打ち込むことが大切になってきます。

「若いときに仕事に打ち込み、自由度の高いキャリアを形成しておくとよい」のイラスト

そのため、新卒で入社する企業を選ぶ際には、ワークライフバランスや福利厚生の充実度を過度に重視するのではなく、スキルを習得できるか、成長できるかという観点が重要だと言えるでしょう。

では、どのような企業を選択すれば良いのでしょうか。ポイントは、人事制度や人材育成の体制にあります。

少し具体的に説明しましょう。たとえば、営業と経理と人事をそれぞれ3年間ずつ、計9年間勤務した人は、どの職種でも3年分のスキルと経験しか持っていないことになります。経理職として転職しようとした場合、この人よりも経理経験9年の人のほうが高い評価を受け、好待遇を得やすいでしょう。採用企業としては、経理職として活躍してもらう人を探しているので、当然そのような判断となります。

日系大企業では、さまざまな職種を経験させて、幅広い業務に対応できるゼネラリストとして、社員を育成する方法が主流です。上述の例でいうと、それぞれの仕事を3年間ずつ経験していくというスタイルに該当します。その企業を深く知り、社内ネットワークを構築するうえでは有益な経験です。しかし、転職市場からの評価という点では、割を食ってしまう側面があるのです。

また、日系大企業は、就く職種を特定せずに採用される総合職採用が一般的です。そのため、自分が希望する職種に配属されるとは限らず、望むスキルや専門性を身につけることができないリスクがある点も無視できません。

一方で、職種別に採用する外資系企業やプロフェッショナルファーム(コンサル、法律事務所、会計事務所など)に入社すると、望むスキルや専門性を身につけやすくなります。

たとえば、ITコンサルタントとして入社した場合、ITコンサルタントとしての仕事にアサインされます。本人の希望なしに、人事や経理などの全く違う仕事に配属されるということはありません。何の仕事に就くかが明確になっており、主体的にキャリアを形成できることは、プロフェッショナルファームの大きな魅力です。近年、コンサル業界が就職先として、人気が高くなっている理由のひとつでもあります。

「主体的にキャリアを形成しやすい企業とは」のイラスト

なお、誤解のないように補足しておくと、日系大企業は避けたほうがよいということではありません。日本を代表するような大企業は、その会社だからこそできる社会的意義の大きな事業を行っています。社会課題の解決にダイナミックに取り組んでいくことは、大きなやりがいとなるでしょう。「日系大企業は長く働けそう」といったイメージから、安易に選択するのではなく、仕事の意義という観点から選択する際には、非常に素晴らしい会社がたくさんあります。

また、昨今では職種別の採用に取り組む日系大企業も登場してきました。今後ますます多くの企業で行われていくことでしょう。就職活動を行う際には、ぜひ企業の採用ページで確認してみてください。

「明確な売り」となる専門性を決める際の注意点

これまでお伝えしてきた通り、転職市場で評価されるためには、「明確な売り」となるスキルを身につけることが重要です。ただし、それは同時にキャリアの方向性を定め、キャリアの幅を絞ることでもあります。

そのため自身の専門分野を選ぶ際には、長期的な視点をもち、慎重に選ぶ必要があります。「ステイタスのある仕事だから」「年収が高い仕事だから」などといった理由で選択して、仕事を楽しめないようであれば、せっかく自由度の高いキャリアを手に入れたとしても本末転倒でしょう。

ぜひ自分の好きなことや価値観を軸にして、選択をしてください。好きなことであれば、仕事に打ち込みやすく、楽しみながらスキルを高めていくことができます。結果的に、明確な売りとなる高い専門性をスムーズに獲得できることでしょう。

「自分の価値観・好きなことを重視して、専門性を決めよう」のイラスト

社会はチャンスにあふれている

現在、ジェンダーに関わらず働きやすい職場の実現のため、政府も企業もこれまで以上に力を入れています。2023年には、政府が「プライム市場の企業の女性役員比率を、2030年までに30%にすること」を目指すと発表するなど、指導的立場で活躍する女性が増えることを望み、その後押しをしています。

また、近年はSDGs・ESG(環境・社会・ガバナンス)投資への対応が、企業に求められるようになっています。ESG投資は、いまや世界の運用資産の3分の1を占めており、企業の経営に大きな影響を与えているのです。そのような中、福祉、教育、まちづくり、ジェンダー平等など、SDGs関連のプロジェクトが増え、女性の持つ英知や感性が企業や社会にとって不可欠となっています。

実際、数多くの企業から「女性の経営幹部・幹部候補を採用したい」という声が届きます。女性役員比率を上げ、サスティナブルな経営を目指す企業のニーズに鑑みると、現代は女性にとって、チャンスにあふれた時代とも言えるのではないでしょうか。これから社会に出る皆さんには、自分の「好き」を大切にし、働く喜びを感じながら、望むキャリアを歩んでいってほしいと願っています。

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著者プロフィール
渡辺 秀和
CareerPod編集長
渡辺 秀和
コンコードエグゼクティブグループ|代表取締役CEO
戦略コンサル、外資系企業の幹部などへ1000人を越えるビジネスリーダーの転職を支援したキャリア設計の専門家。「日本ヘッドハンター大賞」初代MVP受賞者。 著書:『未来をつくるキャリアの授業』(東京大学でのキャリア設計の教科書に指定)

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