女性のキャリアとライフイベント
女性のキャリアデザイン論

第1回 女性のキャリアとライフイベント

「将来、結婚や育児、介護などのライフイベントと仕事は両立できるの?」
「ワークライフバランスを考えると、やはり安定した大企業や公務員へ就職すべき?」
「あるいは、弁護士や公認会計士などの資格を取得しておくのが良いかな?」

プライベートとの両立を考えると、どのような仕事に就くと良いのか心配になる方も多いでしょう。

「女性のキャリアデザイン」というテーマで、ライフイベントに向き合いながらキャリアを築く方法についてお伝えする本シリーズ。今回は、社会に出て数年経ち、出産や育児などの時期を迎えると、どのような悩みを抱えるケースが多いのかを見ていきましょう。

なぜ、優良企業に勤めても「ワークライフバランス」で悩むのか

現代では、女性活躍推進法の改正や、改正育児・介護休業法(パパ育休)の施行、働き方改革による残業時間の削減など、働きやすい職場の実現のため、国を挙げての取り組みが進んでいます。

並行して、企業も「女性活躍推進室」を設置したり、育児・介護などに対応できるようなフレキシブルな人事制度を導入したりするなど、社会と企業の両方に変化が見られます。

もちろん、これらの支援策だけではまだ十分ではないかも知れません。しかし、働きやすい環境の整備にむけて、かなり改善が進んできていることも確かです。

「働きやすい環境が整備されてきている」のイラスト

それにもかかわらず、いまだに多くの方がプライベートとキャリアの両立について悩んでいるのが実態です。意外なことに、育休制度や福利厚生の整った日系大企業や公務員へ就職した、優秀な皆さんも例外ではありません。なぜ、制度の整ったホワイトな優良企業に勤めている方でも、ワークライフバランスについて悩むのでしょうか。

人事制度が整っていても、キャリアの悩みは解消しきれない

長い育休制度や時短勤務制度などが整備されているのは、もちろん素晴らしいことです。しかし、それらの制度はその企業に就業している時にしか利用できません。他方、長い人生を見据えると、ひとつの企業に勤務し続けるのは、けっして容易なことではないのです。

たとえば、親の介護や闘病などによっては、勤務先を離れざるを得なくなることもあります。「出産後もバリバリと働くぞ」と思っていても、産まれたわが子を抱いた時に、やはり数年間は育児に専念したいと気持ちが変わることもあるでしょう。パートナーの海外転勤に、自分も一緒に行きたいと思うかもしれません。

また、在職企業に就労し続けられたとしても、仕事内容や立場などが変化して、復職しづらくなることもあるのです。「所属していた部署で、ポジションの枠が埋まってしまい、不慣れな部署に異動せざるを得ない」「休職している間にかつての同期が昇格し、その下で働くのが辛い」といったケースもよく伺います。

「ひとつの企業に勤務し続けることは、けっして容易ではない」のイラスト

「働きやすい環境を整えるために、もっと企業が努力すべきでは?」と思う人もいるかもしれません。しかし、民間組織である企業ができる努力にも、限界はあります。

いつ復職してもらえるか、さらには本当に復職してくれるのか分からない人のために、数年間もポジションを空けておくことはできません。休職している1~3年の間、抜けた穴を埋める人材を採用する必要があるでしょう。社員が復職した際に、その新しく採用した社員をどう処遇すれば良いのか、という問題も起こります。企業も社員の働きやすい環境を整えるために腐心しているのです。

このように見ていくと、新卒でホワイトな大企業を選択したとしても、プライベートの事情や自分の気持ちの変化などによって、働き続けられるのかは不確実であることが分かります。

それでは、どのようにキャリアを考えればよいのでしょう。次回は、仕事とプライベートを両立させるための「新しいキャリアデザイン」の考え方について解説します。

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著者プロフィール
渡辺 秀和
CareerPod編集長
渡辺 秀和
コンコードエグゼクティブグループ|代表取締役CEO
戦略コンサル、外資系企業の幹部などへ1000人を越えるビジネスリーダーの転職を支援したキャリア設計の専門家。「日本ヘッドハンター大賞」初代MVP受賞者。 著書:『未来をつくるキャリアの授業』(東京大学でのキャリア設計の教科書に指定)

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