投資銀行の組織と仕事内容
投資銀行業界の歩き方

第2回 投資銀行の組織と仕事内容

前回は、投資銀行の役割と、そこで働く魅力ややりがいを紹介しました。第2回では、投資銀行の組織や業務内容について詳しく解説します。

一言で「投資銀行」と言っても、その内部はいくつもの部門に分かれています。具体的な組織構成は各社によって異なるため、今回は代表的な組織について見ていきましょう。

投資銀行の組織はどのように分かれている?

多くの企業では、「経営企画部」「人事部」「広報部」「営業部」など、仕事内容によって部門が分かれるのが一般的です。それと同様に、投資銀行においても仕事内容に応じて主に5つの部門が存在します。

「投資銀行の主な組織」についての図表

5つの部門の業務内容

投資銀行の各部門でどのような仕事をしているのか、詳しく見ていきましょう。

投資銀行部門(IBD)

投資銀行の組織内には、さらに「投資銀行部門」という部門が設置されており、花形部門の1つです。「投資銀行部門」の英語表記である「Investment Banking Division」の頭文字を取って、通称「IBD」と呼ばれています。

投資銀行部門の主な役割は、顧客である企業がビジネスを成長させられるように、資金面でのアドバイスやサポートを行うことです。具体的には、他の企業を買収して事業を大きくしたり、自社の事業の一部を他の企業に売却して資金を稼いだりする際の支援をしています。

例えば、他の企業を買収する場合では、次のような流れで仕事をします。

「企業を買収する際の流れ」についての図表

これら全てのプロセスを1人の社員が行うわけではありません。投資銀行部門の中では、「カバレッジ」と「プロダクト」という担当に分かれており、お互いが協力しながら仕事を進めています。

「カバレッジ」は、一般的な企業でいう「営業」にあたります。顧客先へ電話や訪問をして新しい仕事を取ってきたり、これまで取引のある顧客に定期的に連絡を入れて、次の契約に繋げる機会を伺ったりする役割です。

「プロダクト」は、カバレッジが顧客へヒアリングした内容に基づいて、顧客が資金を集める方法を考えたり、実際に資金を集める段階でのサポートを担当したりする役割を担っています。

つまり、直接顧客とやりとりをするのが「カバレッジ」、カバレッジが顧客とやりとりできる土台を整えるのが「プロダクト」であると理解しておくと良いでしょう。

「投資銀行部門のカバレッジとプロダクトの違い」についての図表

マーケット部門

投資銀行部門と並んで花形部門と言われるのがマーケット部門です。投資銀行部門が新たに資金を集めたい企業をサポートするのに対して、マーケット部門は「機関投資家」と呼ばれるプロの投資家、たとえば保険会社や信託銀行と、株式をはじめとした金融商品の取引をしています。

マーケット部門では、さらに細かく役割が分かれており、それぞれが連携しながら業務を行っています。主な役割は、次の3つです。

①セールス

後述するリサーチ部門が作成したレポートの内容を活用しながら、顧客に対して金融商品の売買を提案します。

②トレーダー

顧客に代わって、セールス経由で注文された金融商品の売買を行います。売買のタイミングによって顧客の利益や投資銀行が得られる報酬が変わるため、取引における高度な専門技術が必要です。

③ストラクチャリング

顧客のニーズに合わせて、複雑な数字を扱いながら金融商品の開発を行います。

セールスは金融商品の販売だけではなく、機関投資家からの「投資銀行に株を買い取ってもらって利益を得たい」というリクエストにも応えます。トレーダーと相談しながら、どのタイミングで買い取ればお客様に満足いただけるかを検討します。適正なタイミングや買い取り額を探るのは簡単なことではありませんが、お客様にとって一番良い形で取引が成立したときは喜びもひとしおですね。

(外資系投資銀行セールス部門 30代前半 男性)

リサーチ部門

リサーチ部門の主な役割は、情報分析とレポート作成です。投資銀行部門やマーケット部門は、顧客に対して提案するための資料を作成しますが、その際にはリサーチ部門が様々な情報を分析して作成したレポートが活用されているのです。なお、リサーチ部門をマーケット部門の一部として設置している投資銀行もあります。

リサーチ部門で働く人は、一般的に「アナリスト」と呼ばれます。株式市場をはじめとする金融市場や、顧客となる企業の業界などを分析し、「今後どの株式の値段が上がるのか」「金融業界の将来はどのように動いていくのか」といった予測を行うスペシャリストです。

なお、「リサーチ」というと、一日中ずっと机に向かってデータを収集・分析している姿をイメージするかもしれませんが、それだけではありません。リサーチ部門が作成したレポートの内容が優れているほど営業担当者の提案に説得力が生まれ、顧客からの仕事を受注しやすくなります。

そのため、時には営業担当者と一緒に顧客企業へ訪問したり、会議に参加したりと、より精度の高いレポートを作成するための活動も欠かせません。アナリストが行った分析に基づいて、顧客はどの企業を買収すべきか、どの会社の株式を購入すべきかを判断することになるため、アナリストの実力が顧客企業の明暗を分けると言っても過言ではないでしょう。

リサーチ部門のアナリストは、「〇〇投資銀行のAさん」という肩書だけではなく、「□□業界に強いアナリストはAさん」というように、個人の名前で認知されることも多くなります。有名金融雑誌の「人気アナリストランキング」にランクインすることもあり、実力をつけ知名度を上げることでより大きな仕事を掴んでいきたいです。

(外資系投資銀行セールス部門 30代前半 男性)

アセットマネジメント部門

アセットマネジメント部門の役割は、保険会社や投資銀行といった機関投資家から預かった資金を長期的に運用して利益を上げることです。例えば、顧客から100億円を預かり、それを元手に株式を売買して資産を105億円に増やす仕事を行います。

アセットマネジメント部門は、投資銀行の一部門として存在することもあれば、「〇〇アセットマネジメント株式会社」のように、投資銀行と同じ系列の別会社として存在する場合もあります。

「アセットマネジメント部門の業務の流れ」についての図表

それでは、なぜ機関投資家は投資銀行のアセットマネジメント部門に資金運用を依頼するのでしょうか。それは、資金運用の失敗リスクを回避するためです。

機関投資家が扱う資金の運用額は億単位であることが多く、運用に失敗すると自社の経営に大きな損失を与えてしまいます。そのため、資金運用のプロであるアセットマネジメント部門に資金を預け、確実に利益を上げられるようにしているのです。

ミドル・バックオフィス

ミドル・バックオフィスは、投資銀行部門やマーケット部門が問題なく顧客とやりとりができるように、裏方として支える仕事をしている部門の総称です。先述のリサーチ部門をはじめ、リスク管理部門、経営企画部門、人事部門、システム部門など、さまざまな部門から構成されています。

投資銀行の仕事は、金融商品取引法や会社法などの法令のほか、規制や制度を遵守しながら進めることが必要です。そのため、ミドル・バックオフィスでは、法令や規則に対応した書類の作成や、想定外のトラブルが発生した際の迅速な対応を担っています。

「ミドル・バックオフィス」についての図表

今回は、投資銀行の組織について詳しく紹介しました。投資銀行の仕事は複雑ですが、5つの部門、及び、部門内の役割を把握しておくことで、基本的な全体像を理解することができるでしょう。

次回は、代表的な投資銀行について、各社の特徴や強みを紹介します。

いいね
0
わかりやすい
0
新しい発見
0
著者プロフィール
CareerPod編集部
スロー就活サイト
CareerPod編集部
自分の好きを見つける『スロー就活』で、理想のキャリアを歩もう。 あたらしい就活サイト「CareerPod」の編集チームです。

CareerPod会員限定の
機能です。

無料会員登録をするか、既に会員の方は
ログインをすれば利用いただけるようになります。

CareerPod会員になると…
・CareerPodだけの選考・イベントに応募
・会員限定コンテンツの閲覧・視聴
・あなたの興味に応じてLINEで情報が届く