- 三菱商事:国内11拠点、海外107拠点
- 三井物産:国内11拠点、海外114拠点
- 住友商事:国内20拠点、海外108拠点
- 伊藤忠商事:国内7拠点、海外87拠点
- 丸紅:国内13拠点、海外117拠点
第3回 総合商社の組織構造
今回は総合商社の一般的な組織構造について解説をします。第2回で紹介した総合商社のビジネスを推進するのにあたって、どのような組織体制となっているのでしょうか。
総合商社の主な部門
多くの総合商社では、仕事の内容や性質によって、大きく「営業部門」と「コーポレート部門」の2つに分けられます。
営業部門
総合商社の営業部門は、「金属資源本部」「食料本部」といった形で、取り扱う商品の分野ごとに部署が分かれます。そのため、同じ営業部門でも、部署ごとに取引先の国や地域が異なることも少なくありません。
営業部門の役割は、「最前線でのビジネスの開拓・推進」といえるでしょう。一般的な企業の営業職の場合、顧客となる企業への提案業務がメインである一方、総合商社の営業部門では、第2回で解説した「トレーディング」「事業投資」を推進する役割です。
より具体的には、各部署でトレーディングと事業投資を担う部隊が分かれており、トレーディングの部隊では、国内外のさまざまな企業や海外政府との交渉や、取引がスムーズに進行するための物流の手配や緊急時の対応などを担います。また、事業投資の部隊は、投資に向けた市場・企業分析や資料作成、投資先企業の管理などが主な業務です。
コーポレート部門
コーポレート部門は、経理部、財務部、人事部・法務部などの機能別に部署が分かれます。一般的な企業の場合、その会社を支える社員や、出入りするお金の管理などを担うイメージですが、総合商社のコーポレート部門は、より重大な役割を担っているといえるかもしれません。
たとえば、総合商社におけるトレーディングや事業投資では、莫大な資金が動くことになります。そのため、資金の調達や取引先にリスクがないかの審査といった業務は非常に重要です。また、第1回で解説した通り、「経営人材の育成」が重要なミッションであり、海外駐在やグループ企業への出向などの計画をはじめ、人事が担う役割も大きくなります。
サッカーにたとえれば、営業部門がフォワードだとすると、コーポレート部門はディフェンダーでありながら、司令塔の役割も担い、時にフォワードとともに動くといった形で、総合商社というチームにおいて欠かせない存在ともいえるでしょう。
参考:採用区分について
総合商社の新卒採用は「総合職」と「一般職」に分かれていることがほとんどで、営業部門・コーポレート部門それぞれに配属の可能性があります。
総合職は、総合商社の根幹を担う位置づけであり、たとえば営業部門においては、トレーディングや事業投資をメインで担うイメージです。配属される部門が幅広く、海外を含むあらゆる拠点へ転勤の可能性がある上に、将来的に管理職や経営幹部として活躍することが期待されます。
一方で、一般職は「事務職」とも呼ばれ、日々の会計処理や契約書の作成など、会社全体の業務がスムーズに行われるようにサポートする業務が中心です。デスクワークが中心であり、転勤がないなどの違いがあります。
総合商社の拠点
総合商社は世界中でビジネスを展開していることもあり、国内外で多くの拠点があります。大手総合商社5社の2024年時点での拠点数は以下の通りです。
各社とも、国内よりも海外に多くの拠点を有しており、全従業員の約2割の従業員が海外で勤務をしています。他業界よりも海外勤務の割合は高く、グローバルで活躍したい方には、総合商社でのキャリアはやはりおすすめです。
なお、日本企業が海外に進出する際の拠点は「現地法人」「支店」「駐在員事務所」の3種類に分かれます。このうち、現地でのビジネスを行うのは現地法人と支店です。駐在員事務所は現地での市場調査や情報収集のために設立するもので、本格的に進出する前段階で立ち上げることが多くなります。
現地法人と支店について、前者は日本本社とは別に海外で会社を立ち上げる形式、後者は日本本社の中の一組織として設立する形式という違いがあります。現地法人は日本本社から独立している面が強く、たとえば税制の面では海外の税率が適用されるため、日本より法人税率が低い地域ではコストを抑えることが可能です。一方で支店は日本本社の社内規定をそのまま使うことができる点などがメリットとなります。
総合商社もこれらの進出方法を使い分けて、海外に拠点を設立しているのです。駐在員事務所に派遣される場合は、これからビジネスを本格化する、いわばベンチャーフェーズを経験することができ、現地法人・支店では海外ビジネスを推進する担い手となれるため、いずれのパターンでも貴重な経験ができるでしょう。
まとめ
第3回では、総合商社の代表的な組織について解説しました。いずれの部門・拠点においても、スケールが大きく、社会へのインパクトが大きい仕事に関われることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
次回は、総合商社の業界地図をお伝えします。総合商社と一口に言っても、それぞれ得意分野やカルチャーは大きく異なっているのです。各社の特徴を掴むことで、自分にあった環境かどうかをイメージできるでしょう。
新卒で三菱商事に入社し、自動車および食品事業の事業開発を担当。海外留学や現地での新会社設立支援などを経験。外資系戦略ファームのベイン・アンド・カンパニーを経て、コンコードに参画。コンサルのほか、総合商社に関する支援で豊富な実績がある。