プロジェクトを通じて、クライアント企業の社員の方々とは、戦友のような関係になります。提案した改革案が実行されて、会社の業績が改善したときは、50代の役員の方と抱き合って喜びました。
(20代後半 男性 戦略ファーム コンサルタント)
近年、新卒の就職活動において、高い注目を集めているコンサル業界。その中でも、名門大学の学生からは、戦略系コンサルティングファーム(以下、戦略コンサル)への志望度がひときわ高くなっています。
また、戦略コンサルへ関心を寄せるのは、就活生だけではありません。総合商社やメガバンク、大手メーカーに勤務するビジネスリーダーからも、転職先として熱い視線を集めているのです。なぜ、これほどまでに多くの人から、有力なキャリアとして注目されているのでしょうか。
戦略コンサル業界について基礎からわかる本シリーズ。第1回では戦略コンサルのキャリアの魅力や仕事内容の概要、年収水準などについて紹介していきます。
まずは、コンサル業界の全体像を見てみましょう。
コンサルタントの仕事は、企業が抱えるさまざまな課題の解決を支援することです。コンサルタントたちが働く会社を「コンサルティングファーム」と呼びます。一方、コンサルティングファームへ仕事を依頼してきた企業は「クライアント」と呼ばれます。
コンサル業界は、その得意領域によって種類が分かれています。戦略立案に強いファーム、人事制度の設計に強いファーム、ITに強いファーム、M&Aに強いファーム、あるいはそれらを総合的に扱うファームなど、さまざまなファームがあります。
戦略コンサルティングファームは、企業の経営戦略や大規模な組織改革など、会社の将来を左右するような経営課題の解決を主にサポートしています。「経営者の参謀(ブレーン)」のような存在とも言えるでしょう。クライアントは、日本を代表するような大企業はもちろんのこと、政府機関や中堅企業、ベンチャー企業など多岐にわたります。
戦略コンサルに分類されるファームには、ワールドワイドに拠点を展開する外資系ファームもありますし、国内で高い実績を誇る日系ファームも存在します。
代表的な外資系戦略コンサルには、マッキンゼー・アンド・カンパニーやボストン・コンサルティング・グループ、ベイン・アンド・カンパニーなどがあります。また、代表的な日系戦略コンサルには、ドリームインキュベータ(DI)や経営共創基盤(IGPI)、リヴァンプなどがあげられます。
戦略コンサルには経営に関する幅広い相談が寄せられます。そのため戦略コンサルタントは、中長期の事業戦略、マーケティング戦略、M&A戦略、新規事業の立案、海外進出、組織改革、DX(デジタルトランスフォーメーション)、サステナビリティ対応など、さまざまなテーマの経営課題に取り組むのです。
戦略コンサルといえば、企業経営の戦略立案に関わる仕事ばかりを行っているというイメージを持つ方もいるでしょう。実際、そのような傾向があった時期もありました。しかし、現代ではクライアント企業から、スピード感をもった変革や、具体的な成果を求められるようになっています。
そのため、戦略立案だけではなく、現場のアクションプランを作り込み、プランをきちんと実施できるようにサポートする「実行支援」まで行うことが珍しくありません。
多くの学生やビジネスリーダーから注目を集める戦略コンサル。その仕事の魅力は、主に以下の3つがあげられます。
戦略コンサルが相談される内容の多くは、クライアント企業だけでは解決が難しい、先端的で大規模な改革につながるテーマです。経営者のように視座の高い仕事に、若くして取り組む経験は、戦略コンサルならではの醍醐味といえるでしょう。
また、クライアント企業が抱える問題を解決した際に、経営陣や社員の方から「ありがとう」と直接感謝の言葉を聞けることは、とても嬉しいことです。さらに、コンサルタントの提案内容は、その企業に勤めている社員や家族、さらには取引企業や顧客にも影響が及びます。多くの人々に役立てることは、戦略コンサルのやりがいとなっており、この仕事の大きな魅力と言えるでしょう。
プロジェクトを通じて、クライアント企業の社員の方々とは、戦友のような関係になります。提案した改革案が実行されて、会社の業績が改善したときは、50代の役員の方と抱き合って喜びました。
(20代後半 男性 戦略ファーム コンサルタント)
一般的な企業と比較して年収水準の高いコンサル業界。その中でも戦略コンサルはトップクラスの年収水準となっています。
コンサル業界へ新卒で入社すると、30歳前後でマネージャークラス(中堅)に昇格することも可能です。外資戦略コンサルのマネージャークラスの場合、2000万円程度の報酬水準となります。さらに、昇格してパートナークラス(幹部)ともなれば、5000万円を超えるようなケースも珍しくありません。
一方、年収水準が高いとされている日本の大手金融機関であっても、30歳時点の年収は1000万円前後のケースが多数です。戦略コンサルの年収水準が非常に高いことがわかるでしょう。また、戦略コンサルの年収は、総合コンサルと比べても1~2割ほど高い水準です。そのため、コンサル業界を目指す学生の間でも、戦略コンサルの人気が高くなっているのです。
戦略コンサルは、さまざまな業界のクライアントの経営課題解決に携わります。この経験を積むことによって、経営者や経営幹部に必要な問題解決力を若いうちから培うことができます。
また、コンサルタントの仕事は、提案をして完了するわけではありません。提案内容をクライアント企業の社員によく理解してもらい、実行してもらう必要があります。そのため、ロジック面での説得力だけではなく、さまざまな立場の人々の感情面にも配慮したコミュニケーションが欠かせません。戦略コンサルの仕事では、このような高度なリーダーシップも鍛えられていきます。
このように、戦略コンサルタントは、企業の経営幹部に求められる力を若いうちから培うことができます。実際に、20代後半~30代という若さで、起業家や経営幹部として活躍する戦略コンサル出身者は珍しくありません。そのため、経営者志望の学生やビジネスリーダーから、経営幹部に至る「キャリアの高速道路」として注目されるようになっているのです。
同期と飲みに行くと、「どのような会社を起業したいか」という話題がよく出ます。ファームの同僚と起業することもありますね。昨年、同期の一人もファームの先輩と起業しました。
(20代後半 男性 日系戦略ファーム コンサルタント)
コンサル業界は他の業界に比べて給与水準が高い傾向にあります。その中でも最も高い水準となっているのが、戦略コンサルです。職位ごとの年収の目安は次のとおりです。
なお、今回紹介した役職ごとの役割や年収は、あくまでも目安となります。ファームや評価によっても異なりますので、ご注意ください。
第1回では、戦略コンサルの魅力や仕事内容の概要について解説しました。戦略コンサルは、優秀な大企業の経営者が悩むような、難度の高い問題に取り組む仕事です。当然のことながら、多くの勉強も必要ですし、働く時間も長くなりがちです。
しかし、プロジェクトが終わった時の達成感、クライアント企業や社会へのインパクトの大きさ、培うことができるスキルなどに鑑みると、大きな魅力のある仕事だといえるでしょう。
次回では、具体的なプロジェクト事例を通じて、戦略コンサルの仕事をより詳しく紹介したいと思います。