戦略コンサルのネクストキャリア
戦略コンサル業界の歩き方

第4回 戦略コンサルのネクストキャリア

前回までは、戦略コンサルの具体的な仕事内容や、各コンサルティングファームの特徴を紹介しました。

戦略コンサルで経験を積んでいくと、企業経営に必要とされる高度なスキルや知識が身につきます。入社して数年も経てば、さまざまな業界の企業から「経営幹部としてわが社に来てほしい」と声がかかり、一般的な企業では考えられない高待遇で抜てきされることが珍しくありません。

戦略コンサル出身者たちは、どのような経験やスキルが評価され、どのような企業へ転職していくのでしょうか。今回は、その代表的な転職先を紹介していきます。

戦略コンサル出身者が重宝される理由

一般的に、転職する際の選択肢は前職までの経験にかなり縛られます。例えば、営業職の中途採用では、営業の経験者を求めるのが通例です。製薬業界の中途採用では、製薬業界の経験者を求めることが多くなります。

一方、戦略コンサル出身者は、コンサル業界の枠に縛られず、製造業やIT業界、広告業界、金融業界など、さまざまな業界・企業から引く手あまたとなっています。さらに、戦略コンサル出身者は、20~30代にして企業の経営幹部に抜てきされるケースも少なくありません。現代の転職市場において、戦略コンサルをはじめとするコンサル業界での経験は、経営幹部に至る「キャリアの高速道路」とも評されます。

なぜ、これほどまでに戦略コンサル出身者は企業から高く評価されるのでしょうか。その理由は、戦略コンサルの仕事を通じて身につけられる「3つの力」にあります。

「戦略コンサルで身につく3つの力」のイラスト

1つ目は「汎用的な問題解決能力」です。戦略コンサルでは、20代という若さで、さまざまな業界の企業の経営課題に関わることになります。3年も在籍していれば、10本以上のプロジェクトを担当することでしょう。課題解決に取り組む経験を積んでいくことで、戦略策定や企業の買収・合併、マーケティング、組織改革など、経営に関する知見が得られます。その結果、特定の業界や企業にとどまらない「汎用的な問題解決能力」を身につけることができるのです。

2つ目は「高度なリーダーシップ」です。プロジェクトを成功させるためには、クライアント社内の人々の協力が不可欠となります。しかも、相手は40代、50代の方であることも珍しくありません。社員の皆さんに協力してもらうためには、論理的に分かりやすく説明することはもちろん、相手の感情や立場に配慮したコミュニケーションが求められます。このようにして鍛えられた、さまざまな人を巻き込む「高度なリーダーシップ」は、経営幹部として活躍していくうえでも大切な能力といえるでしょう。

3つ目が「プロフェッショナル・マインド」です。戦略コンサルタントが携わる課題は、優秀な経営者がわざわざ高額な料金を支払って相談してくるような、難度の高いテーマです。当然、簡単には解決できないため、非常に粘り強く取り組むことが求められます。さらに、ビジネスや世界経済、科学技術に関する最先端の知識、新たなスキルを学び続ける向上心も必要です。鍛え上げた高度なスキルを用いて、クライアントや社会のために最後まで全力を尽くすという「プロフェッショナル・マインド」は、幾度となく直面する困難を乗り越えなくてはいけない経営幹部にとって、必須の資質といえるでしょう。

このような3つの力を、戦略コンサルでは鍛えられることになります。経営人材として、多くの企業から高い評価を得ている理由がおわかりいただけると思います。

6つのネクストキャリア

それでは、戦略コンサル出身者が選ぶ、主要な6つの転職先を紹介しましょう。

「戦略コンサルからの6つのネクストキャリア」の図表

1. ベンチャー企業への転職(経営幹部・幹部候補)

ベンチャー企業の経営幹部・幹部候補は、戦略コンサル出身者にとって有力な転職先の1つです。

近年、最先端のテクノロジーを使って社会課題の解決に取り組むベンチャー企業が増えています。それらの企業は、「社会的意義のあるビジネスで力を発揮したい」と考える、若い世代の戦略コンサル出身者から高い人気を集めています。

ベンチャー企業へ転身する場合、経営陣が若いこともあり、20代で取締役や経営幹部として抜てきされるケースもあります。また、将来起業を考えている人にとっては、優秀な起業家のもとでビジネスの経験を積むことができる貴重な成長機会となるため、魅力的なキャリアといえるでしょう。

2. PEファンドへの転職

コンサルタントとしての経験を積み重ねると、「クライアント企業の経営にもっと深くコミットしたい」と考えるようになることが珍しくありません。そのような戦略コンサルタントから人気の高い転職先が、PEファンドです。

PEファンドは、経営がうまくいっていない企業を買収し、その企業の経営を立て直して、価値を高くしてから売却することで利益を得ている会社です。PEファンドの社員は、投資先企業の取締役などとして、経営の立て直しに参画します。

「PEファンドのイメージ」のイラスト

PEファンドは仕事内容のみならず、報酬面でも大変魅力的な転職先です。支援先の企業を成長させて、売却できた際には数億単位の報酬を受け取る大手PEファンドの社員もいます。

そのため、多くのビジネスエリートたちから転職先として注目を集めています。しかし、投資銀行やコンサル業界などの出身者でなければ入社するのが難しい、非常に門戸の狭い業界となっています。

3. グローバル企業・日系大手企業への転職(経営幹部・幹部候補)

グローバル企業も、戦略コンサル出身者の主要な転職先の1つです。AppleやAmazon、Google、マイクロソフトといったIT企業のほか、製薬・ヘルスケア、消費財、エンタテインメント、保険など、多岐にわたる業界から戦略コンサル出身者は高い評価を受けます。

これらのグローバル企業は、一般的な日系企業と比較して、年収水準が高いことで知られています。そのうえ、戦略コンサル出身者が中途入社した場合、新卒入社の社員よりも高いポジションで入社するケースも珍しくないのです。また、実績を重視する成果主義に魅力を感じる人も多いでしょう。

一方、これまでは年功序列的な人事制度がネックとなっていた日系大手企業も、近年は企業の競争力を高めるために、外部の優秀な人材を経営幹部・幹部候補として、中途採用する例が増えています。

総合商社や日本を代表するような大手メーカーをはじめ、IT企業や金融、ヘルスケアなど、実にさまざまな業界の日系企業から戦略コンサル出身者が求められています。大手企業ならではの社会的なインパクトが大きい仕事に携われる点も、転職先としての魅力と言えるでしょう。

4. 中堅オーナー企業への転職(経営者の右腕・次期社長)

中堅オーナー企業の経営幹部も、戦略コンサル出身者に人気の転職先です。特定の分野において世界トップレベルのシェアを誇る企業、グローバル市場で注目を集める特許や技術を持っている企業など、優れた中堅オーナー企業が日本には数多く存在します。

そのような企業において、社長の右腕や次期社長として、戦略コンサル出身者が抜てきされるケースが増えています。一般の社員とは大きく異なる報酬を得ながら、30代という若さで、そのような高いポジションで手腕をふるうことは大きなやりがいとなるでしょう。

5. 他のコンサルティングファームへの転職

在籍する戦略コンサルから、別のコンサルティングファームへ転職することももちろん可能です。

戦略コンサルでのプロジェクト経験を通じて、「M&Aのプロジェクトが楽しかった」「組織変革にやりがいを感じた」など、自分の進むべきキャリアが見えてくることがあります。そのため、戦略コンサルから財務系コンサル(FAS)へ、あるいは組織人事コンサルへ、ITコンサルへなど、自分が関心を持ったテーマを専門に扱うコンサルティングファームに転職するケースは珍しくありません。

その際、即戦力人材として、以前のファームよりも高い役職・高い年収で採用されることが多くなります。このように、戦略コンサルから別のコンサルティングファームへの転職は、専門性を深めることによるキャリアアップや、より魅力的な待遇の実現につながる可能性があるのです。

6. 起業

「起業」も、戦略コンサル経験者にとって有力なキャリアの1つです。実際、エムスリー、ディー・エヌ・エー、オイシックス、ラクスルなど、戦略コンサル出身者が起業したベンチャー企業で成功している事例は多数あります。

起業の大きな魅力は、社会的にインパクトのある事業を自分の手でつくることができる点にあります。途上国支援や教育改革、地方創生、医療改革など、自分が関心を持つテーマで事業を展開できる点は、大きなやりがいとなるでしょう。

さらに、会社が成長した際には、数億~数十億円単位の収入を得ることが可能となる点も、起業ならではの醍醐味と言えるでしょう。

クライアントとファームへの「貢献」が大前提

今回は、戦略コンサル経験者の代表的な転職先を紹介しました。幅広い業界・企業の経営幹部あるいはプロフェッショナルとして、魅力的な選択肢が広がっていることがおわかりいただけたと思います。

「クライアントとファームへの貢献」のイラスト

ここで皆さんに、注意してほしいことがあります。経営人材を目指すうえで、戦略コンサルでの経験は非常に役立ちます。しかし、自分が欲しいスキルや経験の習得だけを目的に在職するのは、評価されません。クライアント企業に対してしっかりと価値を生み出し、所属するファームに貢献することは大前提となります。他社から声がかかるほど魅力的な経営人材になるまで育ててくれた、上司や組織への感謝と恩返しも忘れないようにしましょう。

第5回では、戦略コンサルの先輩たちの声と、戦略コンサルの今後の課題などを紹介します。

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