新卒で入社した1年目から一人前のビジネスパーソンとして扱ってもらえます。それがプレッシャーにも、やりがいにもなりました。年次など気にせず、どうすれば自分の価値を発揮できるかを考えて自ら動くことができることが重視される風土が根付いていると思います。
26歳 外資投資銀行新卒入社
前回解説したように、投資銀行では「年収の高さ」や「仕事の厳しさ」が注目されやすいです。しかし、投資銀行をキャリアとして考えるうえでは、「どのような力が身につくのか」を知ることも重要です。
投資銀行では、企業を買収するプロジェクトや資金を集める仕事など、若いうちから大企業の経営に関わる機会があります。そのため、会計や財務の知識だけでなく、さまざまな力が鍛えられるのです。
今回は、投資銀行の仕事を通じて身につく代表的な能力について解説します。
※今回の記事では、投資銀行の中でも、企業の買収や資金調達を支援する「投資銀行部門(IBD)」を中心に扱います。
投資銀行の仕事を通じて鍛えられる能力は、大きく分けると次の3つです。
投資銀行でまず鍛えられるのは、企業の価値や経営状況を数字から読み解く力です。
投資銀行では、企業の買収や資金調達の場面で、企業の財務状況を詳しく分析します。たとえば、企業の売上や利益の推移をもとに、将来の業績を予測するためのシミュレーションを行う「財務モデリング」、モデリングの結果を踏まえて、その企業にどれくらいの価値があるのかを分析する「企業価値評価」などが挙げられます。
一般的な事業会社では、企業価値の評価や、買収価格が妥当かを考えるような機会は多くはありません。一方、投資銀行では、若手の段階からこうした重要な仕事を任されるのです。
その過程で身につくのは、会計や財務の知識だけではありません。「この会社はなぜ利益を生み出しているのか」「この買収は本当に企業の成長につながるのか」といった、経営に近い視点も養われます。
数字を扱うスキルと、企業の経営について考える力が同時に身につけられる点は、投資銀行で働く大きな特徴と言えるでしょう。
投資銀行で鍛えられるのは、分析力だけではありません。複雑な仕事を整理し、決められた期限までに着実に進める力も重要です。
投資銀行のプロジェクトでは、社内のチームだけでなく、クライアント企業や法律事務所、会計士、投資家など、さまざまな立場の人が関わります。案件によっては、海外のチームと連携することもあります。
そのため、スケジュールや優先すべき作業をしっかり管理した上で、複数の関係者との調整も漏れなく進めなければなりません。
ここで求められるのは、単に「早く終わらせる力」ではありません。限られた時間の中で正確な情報を揃え、多くの関係者と協力しながら問題なくプロジェクトを完遂させる「スピードと正確さ」の両立が重要なのです。
新卒で入社した1年目から一人前のビジネスパーソンとして扱ってもらえます。それがプレッシャーにも、やりがいにもなりました。年次など気にせず、どうすれば自分の価値を発揮できるかを考えて自ら動くことができることが重視される風土が根付いていると思います。
26歳 外資投資銀行新卒入社
投資銀行で活躍するためには、分析力やプロジェクトを進める力だけでなく、相手に分かりやすく伝えるコミュニケーション力も非常に重要です。
どれだけ分析が正しくても、その内容をクライアントに理解してもらえなければ、価値があるとは言えません。たとえば、「なぜこの企業を買収すべきなのか」「どの方法で資金を集めるのがよいのか」といった内容を、相手の立場や関心を踏まえて説明する必要があります。
特に若手のうちから、企業の財務の責任者であるCFO(Chief Financial Officer)をはじめ、大企業の経営陣と接する機会が多い点は、投資銀行ならではの特徴です。そうした方々と企業の経営について議論を重ねる中で、説明力や信頼関係を築く力も鍛えられていきます。
ここまで見てきた3つの能力に加えて、投資銀行で強く鍛えられる力として、資料作成力も挙げられます。
投資銀行では、クライアントへの提案や社内での議論のために資料を日常的に作成します。こうした資料で求められるのは、見た目の美しさだけではなく、複雑な情報をわかりやすく整理し、読み手が判断しやすい形で伝えることです。
たとえば、企業の業績や市場環境、買収のメリットなどを整理し、「何が重要なのか」「どのような選択肢があるのか」が伝わるように構成を考えます。そのためには、たった1枚のスライドでも、何度も修正を重ねることは珍しくありません。
こうした経験を積むことで、PowerPointやExcelの操作スキルだけでなく、情報を整理し、相手に伝わりやすい形で構造化する力が身につきます。これはあらゆる仕事で求められるスキルであるため、投資銀行を卒業した後も、さまざまな業界で活躍することができます。
仕事に必要な知識を身につける研修や上司・先輩の指導は手厚いです。知識を身に付け、それを実務で実践することでスキルを磨いていける環境は非常にありがたいですし、だからこそ投資銀行の若手は急成長できるのだと思います。こうして得た知識や経験は、投資銀行を辞めて次のキャリアへ進んだ場合も活きてくるものだと感じています。私自身、転職を経験しましたが、投資銀行時代に培った論理的思考やプレゼン資料作成スキルが非常に活きています。
29歳 日系投資銀行新卒入社
投資銀行では、日々のプロジェクトを通じて「企業を数字で読み解く力」「複雑な仕事を前に進める力」「相手に伝わる形で考えを整理する力」が鍛えられます。
忙しさや責任の重さがある一方で、若いうちから企業の重要な意思決定に近い場所で経験を積める点は、投資銀行ならではの魅力です。
第6回では、投資銀行で経験を積んだ人たちが、その後どのようなキャリアに進んでいくのか、代表的なネクストキャリアについて解説します。