第1回 選択する仕事で、人生は大きく変わる
大学に入学をした皆さんも、数年で社会人となります。2,3年後にはじまる「就職活動」が、すでに気になっている方も多いでしょう。
皆さんは、就きたい仕事は決まっているでしょうか。「外交官として日本の力になりたい」、「医師として病気に苦しむ人を救いたい」、「商社でグローバルに活躍したい」など、すでに将来を決めている人もいるかもしれませんね。とても素晴らしいことです。
しかし、「まだ、就きたい仕事は決まっていない」という方が多いかもしれません。また、「どのようにして、仕事を選べば良いのか分からない」と不安を感じている人もいるでしょう。
キャリア設計の方法を基礎から学んでいく本シリーズ。今回は、仕事の選択が、人生に及ぼす影響の大きさについてお伝えしたいと思います。
「仕事の選択」は、人生に大きな影響がある
「仕事の選択」によって、人生は大きな影響を受けます。それを知る学生の方はまだ少ないと思いますが、社会に出ると強く感じるようになるでしょう。
具体的には、主に以下の4点が挙げられます。
- 仕事内容の魅力
- 収入・資産の高さ
- 人との出会い
- 望むライフスタイルの実現
1. 仕事内容の魅力
自分が好きな仕事を選ぶか否か、その仕事内容によって人生の充実度が変わります。
22歳で社会人になって65歳まで働くとすれば、40年以上仕事をします。大学生活4年間の10倍以上となる期間です。また、通常は1日の活動時間の半分以上は仕事をしています。つまり、人は人生の大半の時間を仕事に注いでいるのです。
長期間取り組むことになる毎日の仕事で、楽しいと思えるのか、やりがいを持てるのか。それによって、人生の充実度は大きく変わることでしょう。
2. 収入・資産の高さ
選ぶ仕事や会社での活躍によって、収入や資産が大きく異なってきます。
現代では若くても実力があれば、収入に恵まれる企業も増えています。20代であっても就く仕事によっては、他企業の同期と比べて、2~3倍の収入となることは珍しくありません。30代以降となれば、もっと大きな差がつくでしょう。
そして、収入や資産は、自分ひとりだけに影響するものではありません。将来持つことになるかもしれない、家族の生活にも直結する重要な要素となるのです。
3. 人との出会い
誰のために働くか、誰と働くかということも、仕事や会社によって変わります。
仕事は収入を得る手段としての側面もありますが、それだけではありません。すべての仕事は、「誰か」に貢献して、喜んでもらうための活動です。むしろ、仕事の本質はこの点にこそあります。
仕事によって、この肝心な「誰か」が変わってきます。「子供たちに勉強の喜びを伝えたい」、「働く女性たちを応援したい」、「農業・漁業で頑張る人たちに役に立ちたい」など、皆さんにも応援したい「誰か」がいるのではないでしょうか。自分が役立ちたい人のためであれば、仕事のやりがいも倍増します。
また、会社によって社風は異なります。マイルドな組織もあれば、上下関係が厳しい組織、ストレートに話す組織など、さまざまです。どのような上司、先輩社員と働くのかによって、日々の気持ち、会社へ行く楽しさも大きく変わることでしょう。ぜひ、自分にフィットする環境を選択したいものです。
4. 望むライフスタイルの実現
ライフスタイルも、仕事や会社によって異なります。
もちろん、勤務時間の長さや住む場所も、仕事の影響を受けます。地元の企業へ就職して住み慣れた町へ戻るという人もいれば、グローバル企業に就職して海外で働くという選択をする人もいると思います。
また、長い人生を見すえると、育児や介護といったライフイベントによって、会社を辞めざるを得なくなることもあるかもしれません。そのようなときでも、若いうちに鍛えられる会社に就職しておけば、ワークライフバランスのよい他企業へ転職することも可能になるでしょう。
「有名な大企業に入れば大丈夫」は本当?
「知名度の高い企業や、就職偏差値が高い企業を選んでおけば、大丈夫だ」と考える人もいるかもしれません。
しかし、これは少し危険な考え方です。「知名度」や「人気がある」というのは、他人や世間からの評価に過ぎず、自分の中の価値観ではありません。有名企業だったとしても、自分がやりたい仕事とは異なる場合も、多々あるでしょう。
そうであれば、せっかく入社しても、仕事が苦痛になってしまうかもしれません。お金のためだけや、世間体のためだけに、長期間頑張るのはとても大変です。人生の多くの時間をかけることになる仕事を、世間一般のイメージを軸にして選んでしまうことのリスクは、ここにあります。
社会へ出た後で、その重要性に気づく人も、残念ながら少なくありません。厚生労働省発表の『学歴別就職後3年以内離職率の推移』によると、新卒社員の約30%が3年以内に退職する状況が、25年以上も続いています。そして、この短期離職を生み出す最大の理由は、「仕事が自分に合わなかったため」となっています。
これは、日本を代表するような名門企業においても、例外ではないのです。私たちにも、第二新卒のビジネスエリートからの相談が絶えません。学生時代にしっかりと考えて、仕事を選択することの大切さが分かるでしょう。
望む人生を実現する「キャリア設計法」を知る
同じ大学を卒業しても、「選んだ仕事」や「社会に出てからの活躍」によって、人生は大きく変わります。人生に及ぼす影響の大きさを考えれば、仕事の選択は、大学入試と同様に重要だと言えるでしょう。
振り返ってみれば、小学校から大学を卒業するまでの15年以上の学習は、一人ひとりが社会で幸せに活躍するための準備でもあります。しかし、肝心な「仕事の選び方」や「キャリア設計」について、体系的に学ぶ機会は、残念ながら日本にはほとんどないのです。私たちがキャリア教育活動に尽力している理由のひとつも、この点にあります。
さらに言えば、目指す仕事によって、学生時代に身につけるべき能力や、専門性も異なってくるはずです。キャリアを考えることは、勉学や学生生活をより充実したものにしてくれるでしょう。
次回からは、キャリア設計の具体的な手順を紹介していきます。これらは、ビジネスリーダーとして社会で活躍する、皆さんの先輩たちが実践している方法です。
難しいのではないかと心配する方もいるかもしれませんが、ご安心ください。取り組むべきは、2,3ヶ月に1回自分と向き合う時間をつくる、1日5分ほど日記をつけてみるといった程度のことです。資格試験のように、毎日猛勉強するといったことではありません。
さあ、皆さんも望む人生を実現するキャリア設計法を、楽しくマスターしていきましょう。