第5回 「就職活動」を成功へ導く選考対策
「キャリア戦略」をつくり、志望先の業界や企業が決まった後で、大学2年~3年になると、いよいよ就職活動がはじまります。
志望する仕事に就ければ、楽しく働くことができ、高いスキルを培うことができる。さらには、それによって収入に恵まれる上に、次も良いキャリアをつくっていける――というように、就活の結果は後の人生にさまざまな影響を及ぼします。
しかし就活の選考には、個人面接やグループ面接など、筆記中心の大学入試とは異なる内容が多く含まれます。そのため学生の皆さんからは、「口下手だから自信が持てない」「初対面の社会人と話すのは緊張する」など、悩む声をよく聞きます。
そこで、第5回となる本記事では、就活における選考対策のポイントをご紹介したいと思います。
一流のビジネスパーソンは「準備」をする
「採用企業は、経歴や人物を見て、適正に評価してくれるはずだ」と考えている人を時々見かけますが、果たしてそうでしょうか。
就活や転職活動では、準備や対策がとても大切なのです。それを理解していないと、素晴らしい経歴や実績があったとしても、選考に落ち続けることもあり得ます。一方、準備や練習をすれば、面接も上手に行えるようになるのです。
「準備や面接スキルで結果が変わるなんておかしい」「面接対策なんて、小手先だけのテクニックだ」――と考えるのは、早計です。後述するように、むしろ準備することは、社会人としての常識だと言ってもよいでしょう。
実は、官庁や総合商社、大手銀行などで活躍するビジネスリーダーの皆さんも、転職をする際には、応募書類を練り込み、面接の準備も行なっています。
この選考対策は、応募者の能力や実績を等身大以上にアピールするということではありません。聞き手の気持ちを汲みながら、経歴や人物像をわかりやすく伝えることが目的のものです。
「一流企業で活躍するビジネスリーダーが、面接対策をしているの?」と驚かれた方もいるでしょう。しかし考えてみれば、ビジネスの場において、準備をしたり、練習したりすることは、当たり前のことです。
自社製品を売る営業スタッフも、銀行から資金を借りる経営者も、魅力をわかりやすく伝える資料を練り込み、想定問答に対する回答を用意します。本番に備えて、実際に話す練習もするでしょう。
むしろ、このような「準備」をできない人は、一流の社会人とは見なされません。相手の気持ちを想像した上で、わかりやすく伝える努力や工夫をできる人が、企業からは求められているのです。
準備をすると言っても、難関資格取得のような膨大な時間と労力がかかるわけではありません。その意味でも、選考対策をおろそかにするのは、もったいないことだと言えるでしょう。
選考では「一緒に働く仲間に相応しいか」が確認されている
そもそも採用企業は、選考を通じて、何を確認しているのでしょうか。その目的を理解しておかないと、良い結果は得られません。
端的に言えば、採用企業は「候補者が一緒に働く仲間に相応しいのか」を確認しています。
当然、頭がよいというだけでなく、仕事への情熱、他者への思いやり、自己管理能力、素直に受け止める力、成長意欲などといった要素が、総合的に判断されることになります。
自分がサッカーのチームをつくる際のことを想像してみましょう。候補者は、ルールも十分に知らないような初心者が中心です。
なるべく高い身体能力を持つ人に入ってもらいたいものの、サッカーをやりたい意欲が高い人や、チームプレイができる人、素直に学んでくれる人、粘り強く頑張れる人などに参加してほしいと思う人が多いのではないでしょうか。
新卒採用もこれと同様です。能力面のみならず、人物面も含めて一緒に働く仲間に相応しいかが総合的に判断されます。ましてや会社で働く期間は、とても長いのです。現時点での能力以上に、伸びしろが重要になります。
このような前提を踏まえて、選考ステップごとに対策のポイントを解説していきましょう。なお、詳細な選考対策については、就活の手引きのシリーズ「就職活動のはじめ方」をご覧ください。
書類選考の対策
選考における最初の関門は、書類選考です。
経歴や実績が同じであったとしても、書類の書き方で合否が分かれてしまうのが実態です。それほどまでに重要であるにもかかわらず、誤解の多いステップでもあります。
書類選考における提出書類は、履歴書やエントリーシート(ES)が一般的です。書類に書かれた志望理由や自己PRをもとに、応募者の熱意や人柄、適性などが確認されます。
問題解決能力をアピールすべきなのか、コミュニケーション能力が高いことを伝えるべきなのか、専門知識があることを盛り込むべきなのか…。それらは、採用企業の仕事内容によって、異なってきます。
考えてみれば当然のことで、サッカー部に入るときと、吹奏楽部に入るときでは、アピールすべき能力は異なるでしょう。
つまり、ESには「こう書けばよい」という正解があるわけではありません。まずは採用企業が求めている能力や適性を理解したうえで、作成することが大切なのです。
なお、相手の気持ちや望んでいることを汲んだうえで、資料を作成したり、コミュニケーションしたりすることは、社会人としてとても大切なことでもあります。ESを真剣に作成した経験は、就職後にも活きることでしょう。
筆記試験の対策
続いての関門は、筆記試験です。
就職活動における能力適性試験は、中学受験における算数や国語に近い問題が出題されます。試験本番の制限時間がある中で、久しぶりに見るそれらの問題を解こうとすると、予想以上に解けずに焦る方も多いようです。
また、人気企業には、試験に強い名門大学の学生が殺到します。そのような筆記試験に丸腰で向かうのは危険です。
本来の実力を発揮できるようにするためにも、練習問題で慣れておく必要があります。もちろん、少しやればすぐにカンを取り戻せるでしょう。筆記試験対策では、対策本をもとに、手を動かして練習することをおすすめします。
面接の対策
最後の関門は、面接です。
面接は、人物・実績・志望理由などを確認する「個人面接」が中心となりますが、そのほかにも、以下のような形式の面接も行われます。これらの詳細については、CareerPod内「就活の手引き」の記事で確認ください。
ケース面接
特定のテーマに対して、面接官とディスカッションする形式の選考
グループディスカッション(GD)
応募者が4~8名程度のグループに分けられて、応募者同士でディスカッションを行う形式の選考
集団面接
面接官が1~4名程度、学生が2~6名程度で行われる面接。面接官と応募者での対話形式による選考
個人面接における主な内容は、「志望理由」と「自己PR」です。
仕事への情熱、自己管理能力、他者への思いやり、成長意欲等々、一緒に働く仲間に相応しい人物か否かが、さまざまな角度からチェックされます。
志望理由として、自分の想いを伝えることはもちろん大切です。しかし、ビジネススキルを持たない新卒学生を粘り強く育ててくれる、採用企業の気持ちをよく考えることも必要です。採用企業にとって納得感のあるロジックで、ストーリーを組み立てましょう。採用企業で取り組む「仕事内容」への熱い想いが鍵となるはずです。
自己PRについては、採用企業がどのような能力・適性を持つ人を採用したいと考えているのかを理解したうえで、伝えることが大切です。その能力・適性があることを示すエピソードもしっかりと準備しておきましょう。
志望理由の説明ひとつをとっても、準備や練習なしに臨むのは難しいものです。あまりに壮大な夢を熱く語るだけでは「目の前の仕事にしっかり打ち込んでくれるのかな?」と不安に思われかねません。
また、自分の話し方や表情、しぐさが、受け手に与えるインパクトを意識して、ブラッシュアップしておくことも、非常に大事です。自分の面接練習の様子を録画して確認することも役立ちます。「無表情でリアクションが薄いので、相手が話しづらそうだな」「うん。うん。とあいづちを打っているので、目上の人に対して失礼な印象があるな」など、マイナスな印象を与えるクセが見つかることも珍しくありません。
なお、これらは「他人の目を気にして、それに合わせる」という発想とは、まったく異なります。
仕事とは、自分の能力やスキルによって、他者へ貢献し、社会をより良くしていく活動です。他者への貢献が仕事の鍵となるならば、自分の行動やふるまいが、相手に与えるインパクトについて配慮するのは、当然のことです。
自分のコミュニケーションを見直して、望む姿に近づくことは、仕事だけでなく、プライベートも含めて人生を豊かにします。面接は、そのための好機といえるでしょう。
長期インターンのすすめ
就活を見据えた際に、長期インターンへの参加は、とても役立つ経験となります。
長期インターンでは、社会人になって1~2年目に教わるような仕事を先取りできます。具体的には、会議の議事録の取り方、データ分析や資料作成の手法、効果的なプレゼンテーションの方法など、ベーシックな「ビジネススキル」を習得することになります。
また、上司への報告や相談の仕方、顧客とのコミュニケーションなど、社会で人と一緒に働く際に不可欠となる「協働するスキル」を学べることも、貴重な経験となるでしょう。さらには、社会人の持つ高い視座や価値観、仕事への姿勢を知ることも、働いていくうえでは大切なことです。
このような経験と実績は、就活時に大きな武器になります。新入社員を育成するコストや負荷を考えれば、「社会人としての基礎スキルを持つ学生を優先的に採用したい」と企業が判断するのは当然のことです。
さらに言えば、就活をはじめたばかりの頃は、面接で社会人と話をするというだけでも、多くの学生が緊張するはずです。長期インターンを通じて社会人と話し慣れていることも、就活においてアドバンテージとなります。
そして、このようなスキルを学生時代に身につけることができれば、卒業後に入社した会社でも、早い段階から活躍しやすくなります。それによって、顧客から喜ばれたり、上司から高い評価を得られたりすれば、自分のやる気もより高まるでしょう。そして、ますます仕事に打ち込むのが楽しくなり、さらに成果も上がるという、良い循環に入っていくことができるのです。
合否の結果にとらわれすぎない
最後に皆さんへお伝えしたい大切なことがあります。
それは、「就活の合否結果にとらわれすぎない」ようにしていただきたいということです。仮に第1志望や第2志望の企業で不合格となってしまったとしても、あまり落ち込まないようにしてください。その仕事に適性があっても、しっかり準備していたとしても、面接官との相性など、選考には運の要素も多分にあるのです。
また、当然ですが、特定の会社に入ることが人生の目標ではありません。会社に入ることは、自分が目指す将来像を実現するためのプロセスに過ぎません。
そして、目指す将来像に至る道は、無数ともいえるほどあるのです。第1志望や第2志望の企業に入れなかったとしても、長い目で見れば、人生に大きな影響がないことが大半でしょう。
視野を広く持てば、A社にこだわらずとも、B社やC社でも、自分の将来像を目指すのに素晴らしいキャリアとなることに気づくはずです。
一方、第1志望の企業から内定を得られたとすれば、それはとても喜ばしいことです。しかし、社会人として何かを成し遂げたわけではなく、ようやくスタートラインに立っただけです。これからが本番となります。より良い社会人のスタートを切れるように、卒業までの時間を大切に過ごし、社会に出る準備をしっかり行ないましょう。
就職活動は、社会人としての「成長の好機」です。
結果にとらわれすぎずに、学びのプロセスを大切にしていただけると幸いです。