「キャリア設計」の3つのステップ
キャリア設計のはじめ方

第2回 「キャリア設計」の3つのステップ

前回は、キャリア設計が人生に大きな影響を与えることをお伝えしました。その影響は、充実感、収入・資産、人との出会い、ライフスタイルなど、多岐にわたります。

それでは、キャリア設計はどのように取り組めばよいのでしょうか。今回は、キャリア設計の手順を、3つのステップに整理して紹介します。

キャリア設計に取り組むことは、自分の価値観、将来と向き合う充実した時間となるでしょう。社会人になると慌ただしくなってしまいます。ぜひ、余裕のある学生時代に取り組み、豊かなキャリアを歩んでいただきたいと思います。

「キャリア設計」は3つのステップで行なう

キャリア設計の手順は、登山になぞらえることができます。

登山では、無数にある山の中から、まず自分が登りたい山を選びます。その後、頂上に至るためのルートを設計します。そして、必要な準備をした上で、登山を開始していきます。

「キャリア設計の手順を登山になぞえると」のイラスト

キャリア設計もそれと同様です。まずは、目指すゴールとしての将来像を設定し、そこに至るためのルートを設計します。そして、しっかり準備をしてから就職活動に臨んでいくのです。

具体的には、キャリア設計は、次の3つのステップで行ないます。

「キャリア設計」の3つのステップ
  1. 「目指す将来像」を設定する
  2. 目指す将来像へ至る「ルート」を設計する
  3. 第一歩となる「就職活動」を成功させる

ステップ1:「目指す将来像」を設定する

まずは、「目指す将来像」を設定しましょう。目指す将来像とは、中長期的なスパンでみた、自分がやりたい仕事や人生の理想像です。なお、目指す将来像は、キャリアビジョンと呼ばれることもあります。

「将来は、教育格差をなくすような会社を起業したい」
「凄腕の経営者になって、日本企業の海外進出を推進したい」
「組織を活性化するコンサルタントとして、働きやすい会社を増やしたい」
などなど、皆さんもさまざまな夢があることでしょう。

このようなゴールが定まらないと、積むべきキャリアや、身につけるべきスキルを決めることができません。

目指す将来像を設定することは、当たり前のように思えるかもしれません。しかし、それを設定しないまま、資格の取得に奔走したり、有名企業へ手当たり次第に応募する人は少なくないので、注意が必要です。

「闇雲に努力しても、ゴールにはたどり着けない」のイラスト

それでは、どのようにして目指す将来像を設定すればよいのでしょうか。

私たちは、自分の「好き」をベースに決める方法をおすすめしています。好きなことに打ち込んだ方が人生は楽しいですし、力を注ぐことが苦ではないためスキルも身につきます。そして、その道で一流になることができれば、社会に与えるインパクトや収入も大きくなるでしょう。

つまり、少し長いスパンでとらえると、好きなことを仕事にした方が、精神的にも、経済的にも、社会的にも得るものが大きいということです。これは、ビジネスリーダーとして活躍する、皆さんの先輩たちも異口同音に語るところです。 

ここで、「そもそも、自分が何を好きなのかが分からない…」という方もいるでしょう。実際、自分の好きなことを見つけるのは、けっして容易ではありません。

自分の好きを見つける方法、さらにそれを仕事にする方法については、第3回で詳しく解説しました。ご参照の上、「好き・嫌い分析」を試みていただければと思います。

ステップ2:目指す将来像に至る「ルート」を考える

目指す将来像を設定したら、現状からそこへ至る「ルート」を考えます。私たちは、このルートを「キャリア戦略」と呼んでいます。

多くの場合、目指す将来像の実現は容易ではありません。たとえば、「教育格差をなくす会社をつくりたい」という人が、大学卒業と同時にいきなり起業するのは、リスクが高いでしょう。

高度なプログラミングスキルを持つなど、学生であっても高い価値を生み出せるケースであれば別として、一般的には、スキルや経験が不十分なままに挑戦をするのは、おすすめできません。車の運転にたとえるならば、教習所での練習をせずに、公道に出るようなものです。

ここで役立つのが、「キャリア戦略」です。目指すゴールに到達するために、必要なスキルや経験を得られるルートを設計していきます。

「必要なスキルや経験を得られるように、キャリアを上手につくる」のイラスト

一般的にリスクが高いと考えられている起業も、必要な経営スキルや業界知識、ネットワークを得やすい会社で経験を積んだ後にチャレンジすれば、その成功確率は飛躍的に高くなります。

具体的には、「学生」→「ベンチャーキャピタル」→「○○業界(新規事業開発)」→「○○業界での起業」といったキャリア戦略がその一例です。

もちろん、自分が欲しいスキルや経験の習得だけを目的に在職するのは、評価されません。所属する企業でしっかりとした価値を生み出し、組織に貢献や恩返しすることは大前提となります。その点はぜひご留意ください。

キャリア戦略の設計法については、第4回で詳しく解説しました。その方の経歴や要望などによって、さまざまな手法があります。ご参照ください。

ステップ3:第一歩となる「就職活動」を成功させる

キャリア戦略を設計したら、その第一歩となる「就職活動」を成功させましょう。

「自分は口下手だから、面接は自信がないです…」という人もいるかもしれませんが、安心してください。大学入試と同様で、準備や対策によって格段に上達します。

実は、一流企業や官公庁で活躍する皆さんも、転職をする際に選考対策を行なっています。十分な実績と経験を持つ彼らでも、書類や筆記試験、面接の対策がやはり必要なのです。

社会経験の浅い学生であれば、なおさら準備が必要となるでしょう。社会人と話す機会の少ない学生は、面接を受けるだけでも緊張して、力を十分に発揮できません。また、相手の気持ちを考えて話すことに、慣れていないケースも多いようです。

「自分の魅力を伝えられるように、面接の準備をしておく」のイラスト

そのためにも、本命企業の前に、早い段階で面接を受ける機会をつくり、選考に慣れておくことは重要です。また、1~2年生の頃に「長期インターン」へ参加しておくのも、とても良いです。社会人と話すことに慣れるうえに、基礎的なビジネススキルを身につけられます。選考での評価が高くなるだけでなく、社会に出た後もおおいに役立つ経験となるでしょう。

「就職活動」の取り組み方については、第5回で詳しく解説しました。特に近年は、就活のスケジュールが早期化・複雑化しています。早めに準備をしておくことが大切です。

「スロー就活」で、望む人生を実現する

「どのような人生を送りたいのかを、深く考えたうえで仕事を選ぶこと」と「社会に出る準備をしておくこと」――この2つが社会人として良いスタートを切るうえで、とても大切です。そのため、早い時期から取り組むことで、自分の人生やキャリアと、じっくりと向き合えるようにする「スロー就活」を私たちは提唱しています。

「スロー就活で望む人生を実現する」のイラスト

キャリア設計においては、「目指す将来像の設定」が特に大切です。しかし、それには、自分の価値観をゆっくりと探るための時間が必要となります。

このステップを抜いて、有名企業への就活に奔走したり、面接対策に取り組もうとする人も多いので、ご注意ください。入社して数年経って、本当にやりたいことに気づいたときに、「何年間もロスした」、「軌道修正が大変だ」と悩むような事態は、なるべく避けたいものです。

第3回以降では、各ステップの取り組み方や注意点を詳しく紹介していきます。

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著者プロフィール
渡辺 秀和
CareerPod編集長
渡辺 秀和
コンコードエグゼクティブグループ|代表取締役CEO
戦略コンサル、外資系企業の幹部などへ1000人を越えるビジネスリーダーの転職を支援したキャリア設計の専門家。「日本ヘッドハンター大賞」初代MVP受賞者。 著書:『未来をつくるキャリアの授業』(東京大学でのキャリア設計の教科書に指定)

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