第1回 長期インターンで切り拓くキャリアの扉

学生の皆さんも、数年後にはいよいよ社会人となります。企業や官庁で働く姿を思い描くと、ワクワクするような、そして少し不安になるような気持ちになるかもしれません。

社会に出て楽しく活躍していくために、大学生活をどのように過ごせばよいのか気になっている人も多いことでしょう。そのような皆さんへお勧めしたいのが「長期インターン」への参加です。

学年を問わず参加できて、将来に役立つ長期インターンについて解説する本シリーズ。第1回では、長期インターンの魅力や参加するメリットをご紹介します。

長期インターンとは 

長期インターンは、学生のうちから社員と一緒に働き、ビジネスの現場を経験できる、有償型の中長期プログラムです。

時給は1,000〜2,000円程度、日給であれば6,000〜10,000円程度が相場となっています。期間は3か月〜2、3年程度が一般的です。大学1年生からの参加も可能ですし、就職活動が終わった4年生で参加できるものもあります。

以前は、ベンチャー企業を中心に実施されていた長期インターンですが、昨今では大企業やコンサルティングファームでも募集されるようになりました。受け入れ先の企業で社員が取り組んでいる仕事の一部を任される、実践型のプログラムが一般的です。

長期インターンは、主に新卒1〜2年目で担うような仕事を、学生のうちから経験できる貴重な機会となっています。「社会人経験の先取り」とも言えるでしょう。ビジネススキルを持たない学生でも、最初から丁寧に教えてもらえるため、安心してチャレンジすることが可能です。

一方で、学生を一人前の戦力にするには、時間もコストもかかります。学生が短期間で辞めてしまっては、企業としては報われません。貴重な機会を用意してくれている企業に対して、感謝するのはもちろんのこと、一定期間勤めることでしっかりと貢献するようにしましょう。

なお、長期インターンに参加したからと言って、卒業後にその会社へ入社しなければいけない、ということではありません。どうぞご安心ください。

長期インターンの魅力とは

社会で活躍する多くの先輩たちから大切だと言われている長期インターンの経験。その魅力や価値はいったいどこにあるのでしょうか。以下で長期インターンの主な３つの魅力を紹介します。

魅力1：社会人としての基礎スキルをつけて、良いスタートを切れる

長期インターンでは、社会人になって1〜２年目に教わるような仕事を先取りできます。具体的には、会議の議事録の取り方、データ分析や資料作成の手法、効果的なプレゼンテーションの方法など、ベーシックな「ビジネススキル」を習得することになります。

また、上司への報告や相談の仕方、顧客とのコミュニケーションなど、社会で人と一緒に働く際に不可欠となる「協働するスキル」を学べることも、貴重な経験となるでしょう。

さらには、社会人の持つ高い視座や価値観、仕事への姿勢を知ることも、協働するうえでは大切なことです。社員から自分の仕事に対するフィードバックをもらえることも多いため、素直に学ぶ姿勢があれば、早い成長が見込めます。

このようなスキルを学生時代に身につけることができれば、卒業後に入社した会社でも、早い段階から活躍しやすくなります。それによって、顧客から喜ばれたり、上司から高い評価を得られたりすれば、自分のやる気もより高まるでしょう。

そして、ますます仕事に打ち込むのが楽しくなり、さらに成果も挙がるという「良循環」に入っていくことができるのです。

皆さんも振り返ってみると、勉強や部活において、同様の経験をしているケースが多いのではないでしょうか。早めに準備をして、なるべく良いスタートを切っておくことは、その道で楽しく活躍していくうえでとても大切なこととなります。

魅力2：キャリア設計に役立つ

興味を持った業界での長期インターンに参加することで、仕事内容や働き方の実態を知り、自分の適性や志望とのフィットを確認することができます。これは、就職後のミスマッチを防ぐ上でも大切なことです。

また、多くの社員と直接話すことで、会社の雰囲気や文化、仕事の進め方などを肌で感じることができます。そのような経験を通じて、自分に合う企業文化や社風などを掴んでいけることも長期インターンを経験する価値の1つです。

長期インターンを通して、志望業界とのフィットを確認したり、自分に合う組織の特徴を知ったりしておくことは、キャリア設計や応募先の選定において大きな助けとなるでしょう。

魅力3：就職活動の選考で役立つ

長期インターンの経験と実績は、就活時に大きな武器になります。新入社員を育成するコストや負荷を考えれば、「社会人としての基礎スキルを持つ学生を優先的に採用したい」と企業が判断するのは当然のことです。

志望する企業の仕事内容に近い経験ができていれば、さらに高い評価を得られやすくなります。たとえば、広告代理店志望の学生が、ベンチャー企業でメディア営業の経験をしていれば、提案から受注後の広告施策までの概要を理解していることでしょう。そのような学生であれば、入社後のスムーズな立ち上がりをイメージできますので、企業も採用に積極的になります。

また、就活をはじめたばかりの頃は、面接で社会人と話をするというだけでも、多くの学生が緊張するはずです。長期インターンを通じて社会人と話し慣れていることも、就活においてアドバンテージとなるでしょう。就活がはじまった後で、この差が大きいと気づいても間に合いません。

短期インターンやアルバイトとの違い

長期インターンと類似したものとして、短期インターンとアルバイトがあります。この2つと長期インターンはどのような点が異なるのでしょうか。

短期インターンとの違い

長期インターンに対して、「1dayインターン」や「5daysインターン」などの短期インターンもあります。短期インターンは、就職活動時の選考や企業説明を目的としており、企業の「採用活動」として行なわれているものです。

応募先企業の仕事を疑似体験することで、自身の志向とのフィットを一定程度確認することができます。しかし、短期間のプログラムであるため、ビジネススキルを高めるようなことは難しいでしょう。

アルバイトとの違い

長期インターンとアルバイトの大きな違いは、得られる「経験」や「スキル」にあります。たとえば、家庭教師のアルバイトは、身につけた受験勉強のスキルを活かすことができるため、高い時給を得ることができます。しかし、家庭教師での経験は、教育産業で働く人以外にとっては、企業に入社した後で直接的に役立つ経験とはならないでしょう。

一方、長期インターンでの仕事は、マーケティング戦略を考えたり、PowerPointで資料を作成したり、営業活動を行ったりと、多くの皆さんが社会に出た際に直接的に役立つ経験やスキルを得ることができます。

確かに、家庭教師や塾講師などのアルバイトと比較すれば、長期インターンの「時給」は低くなります。しかし、「社会で活躍すること」を目的とするのであれば、長期インターンで得られる経験やスキルは、将来の自分への大きな投資となることでしょう。

長期インターンは学生生活を充実させる

ここまで、長期インターンには多くの魅力があることをお伝えしてきましたが、「学業」の妨げになるのではないかと心配される方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際に数多くの長期インターン参加者を見ていても、むしろ学業へのモチベーションが高まるケースが多いようです。

「長期インターンに参加したことで、授業で学んだ統計解析の知識が、企業のマーケティングでどのように使われているのか、実社会でどのように役立つのかが分かりました。これをきっかけに、むしろ研究活動への関心が高まりました」と言って、大学院への進学を決めた学生もいます。

学んでいることが社会で役立つと実感できるのは、勉学や研究への意欲を高めるうえで大切なことです。長期インターンは、学生生活を充実させるという観点からも有意義なものだと言えるでしょう。

次回は、長期インターンで担う仕事内容や経験できることを、より具体的に紹介したいと思います。