第6回 書類選考から内定まで~「選考」の実態と対策
自己分析、業界研究、企業研究を経て、入社したい企業が見つかることでしょう。今回は、そのような企業で内定を得るために、「選考の実態と対策」に関する解説を行います。
通常の選考は、書類選考からスタートし、筆記試験、グループディスカッションと進み、複数回の面接を重ね、ようやく内定というゴールにたどり着きます。各ステップでの選考内容と突破するためのポイントを理解しておきましょう。
就活における「選考」とは?
就活における「選考」とは、応募者(学生)が自社へ入社した後で活躍できるか否かを、面接官が見極める場です。
面接官は、自社の社風や企業理念との乖離はないか、現在いる社員と協働して活躍してくれそうかどうかを、書類選考や筆記試験、面接などを通して確認します。書類選考を通過した後は、大学名や大学の成績ではなく、人物面や能力面によって選考が行われていることに留意しましょう。
評価のポイントは、企業や職種によって異なります。しかし、多くの企業では、ビジネスで求められる問題解決力や、他者と協力して仕事を進めていく力、粘り強さや成長意欲などが重視されています。また、現時点でのスキルや能力の高さだけでなく、入社してからの「伸びしろ」も含めて判断されます。
選考では、学生が企業に「選ばれる立場」であると同時に、学生も企業を「選ぶ立場」にあります。忙しい企業の担当者が、時間を割いてくださることへの感謝は必要です。しかし、猫をかぶって、別人格を演じる必要はありません。「この企業で活躍したい」「社員の人たちと一緒に頑張りたい」と思えるかどうかを、しっかりと確認しましょう。
なぜ、選考にはいくつものステップがあるのか?
何段階もの選考ステップを用意することは、企業にとっても大きな負担となるはずです。なぜ、採用企業は、このような選考スタイルをとっているのでしょうか。
新卒社員を、活躍できる人材に育てるまでには、多くの時間、労力、費用がかかります。それにも関わらず、短期間で辞められてしまうと、企業にとっては育成コストが無駄になり、大きな損失が出てしまいます。そのため、企業は自社にフィットする人材を見極めるべく、何段階ものステップを用意し、さまざまな角度から応募者を慎重に評価しているのです。
選考は、応募者である学生にとって、もちろん大切な場ですが、採用企業にとっても将来を左右する重要な場となっていることを理解しておきましょう。
選考における6つのステップ
続いて、一般的な選考内容をステップごとに解説します。対策のポイントも紹介していますので、しっかりおさえておきましょう。
なお、書類選考がなかったり、ゲームを活用したりと、ユニークな選考をする企業もあります。応募の際には各社の採用サイトで、ステップを確認するようにしてください。
ステップ1:書類選考(ES)
書類選考における提出書類は、個人情報を記載した「履歴書」や企業がフォーマットを定めた「ES(エントリーシート)」が一般的です。書類に書かれた内容をもとに、応募者の人柄や熱意、適性などがチェックされます。
ESに書くことができる文字数は少ないので、作成には注意が必要です。短い文章のなかで、応募企業や仕事内容に対する熱意、適性をアピールできるように準備しておきましょう。
ステップ2:筆記試験
筆記試験では、学生の基礎的な能力や性格などが確認されます。企業のオフィスでペーパーテストが課されることもありますが、近年は自宅や「テストセンター」と呼ばれる、全国にある会場からWeb上で行う試験も多いことから「Webテスト」ともいわれます。
筆記試験は、準備した努力が結果に最も反映されやすい選考と言えるでしょう。対策本や模擬テストを活用して、対策をすることをおすすめします。
筆記試験の内容は、大きく分けて「能力適性検査」と「性格適性検査」の2つがあります。それぞれの検査内容は以下のとおりです。
能力適性検査
基礎的な学力を測る検査で「言語分野」と「非言語分野」に分けられます。言語分野は、分かりやすく言えば、国語です。長文読解や文章の並べ替えなど、読解力や語彙力といった総合的な国語力が問われます。一方、非言語分野は、数学や理科にあたり、論理的思考力や計算処理能力が問われます。
性格適性検査
応募者の性格の特徴を調べる検査です。「応募者の検査結果」と「活躍している社員の性格特性」を比較することで、応募者を評価する際の参考にします。
ステップ3:グループディスカッション
グループディスカッションは、応募者同士が4〜8人程度のグループに分けられ、企業から与えられたテーマに沿って議論し、1つの結論を導き出すという選考です。企業によってはグループワークと呼んでいるところもあります。
その場で決められたグループのなかで、ファシリテーター(司会進行)、タイムキーパー、書記、発表者などの役割を分担して、制限時間内に意見がまとまるよう話し合っていきます。ただし、どの役割を選ぶかはあまり重要ではありません。
グループディスカッションでは、応募者の協働する力、コミュニケーション能力、思考力などが確認されます。他メンバーと話し合う際の姿勢や、自分が果たすべき役割を考えて行動しているかといった点が、鍵となっています。友人同士での練習や早い時期に行われる選考などを活用して、グループディスカッションの経験を数多く積んでおくと良いでしょう。
対策法については、「グループディスカッション対策道場」で詳しく解説してありますので、ご参照下さい。
ステップ4:面接
新卒採用の面接は、複数回行われることが一般的です。複数の面接のなかで、さまざまな年代、ポジションの社員の方と面談することになるでしょう。多くの場合、選考の前半は「集団面接」、後半は「個人面接」となっています。
集団面接
面接官が1〜4人程度、学生が2〜6人程度で行われる面接です。グループディスカッションのように応募者同士で議論するのではなく、応募者と面接官の対話になります。そのため、1人あたりの発言の機会はさほど多くなく、発言内容について深掘りされることも少ないでしょう。
集団面接では、参加者が多いので、長々と回答することは避けなければなりません。しかし、回答が簡潔すぎるとアピール不足になる恐れもあり、その調整が難しいところです。このような場合、「日本企業の海外進出を支援したいです」といった抽象度の高い話と、「具体的には、AI・ロボット産業が、日本経済の発展において鍵となると考えており、その支援に特に関心を持っています」といった具体的な内容を組み合わせて話す手法が有効でしょう。要点を押さえた回答と熱意の両方を伝えることができます。
個人面接
面接官1人または複数人に対して、学生が1人で行われる面接です。志望動機やESの内容で気になった部分などを、深掘りして聞かれるようになります。
多くの企業で行われる面接は、応募者の人となりを見極めるべく行われる「人物面接」です。応募企業の仕事への関心や適性、将来やりたいことなどについて質問が行われます。
仕事は、問題解決の連続です。さらに年次が上がるごとにその期待値も高くなります。そのため、困難に直面した際に粘り強く取り組める人物なのか、指摘されたことを素直に受け止めて成長できる人物なのか、が慎重に判断されるでしょう。
また、コミュニケーション能力についても確認されます。考えていることをその場に応じて適切に言語化する力、間違えたときや緊張した時の対応力などが見られています。よい会話をするためには、まずは相手の話をしっかりと聞くことが大切です。そして、自分が話を聞いていることや理解していることを相手に伝えることも欠かせません。あいづちやうなずきといった適切なリアクションを取るように心がけましょう。
回答の内容はもちろんのこと、第一印象やビジネスマナーも面接官の印象に影響を与えるので注意が必要です。当たり前のことですが、印象の悪い人よりも、身だしなみが整っている人、元気よく挨拶をする人、明るい雰囲気の人と一緒に仕事をしたいと思いますよね。選考において企業が最も重要視しているのは、「一緒に働く仲間にふさわしいか否か」であることを深く理解し、面接に臨むようにしましょう。
ケース面接(外資系企業・コンサル)
外資系企業やコンサルティングファームを中心に「ケース面接」と呼ばれる選考が行われることがあります。「◯◯の売上を現在の2倍にするためには?」といった質問に対し、面接官とディスカッションをしながら解決策を考えるというものです。
ここで問われているのは、論理的に議論を一緒に深められる「ディスカッションパートナー」としての適性です。反対意見を持つ相手を打ち負かすための「ディベート」とは目的が異なります。ケース面接で必要となるスキルや考え方は、一朝一夕で身につけることはできません。早めに対策をはじめ、しっかりと練習しておきましょう。
対策法については、「ケース面接対策道場」で詳しく解説してありますので、ご参照ください。
ステップ5:インターンシップ選考(ジョブ)
コンサルや投資銀行、ベンチャー企業などでは、インターンシップを活用した選考が行われることがあります。コンサルや投資銀行の選考では、「ジョブ」と呼ばれます。
実施形式は一般的なインターンと同様ですが、内定に直結する点が異なります。通常、3〜5人のチームが構成され、企業から提示されたテーマに対して取り組むことが求められます。
インターンシップ選考は、学生が仕事内容を疑似体験できる貴重な機会となっているのと同時に、参加者の適性を判断するうえで役立つ選考プロセスともなっています。チームで取り組むため、個の能力だけでなく、他者と協働する力も含めて確認される点が特徴的です。
ステップ6:最終面接
いよいよ最終面接です。最終面接は、役員など企業の経営幹部によって行なわれ、これを通過すれば内定が待っています。
最終面接は、応募者の適性を最終判断する場であると同時に、「志望度の高さ」を確認する場でもあります。採用企業の視点に立てば当然のことですが、熱意ある学生が求められています。
なぜその仕事に就きたいのか、なぜその企業に入社したいのかといった、志望度の高さを確かめる質問への回答を入念に準備しておきましょう。
まとめ:合否結果に囚われすぎないようにする
これまで6回にわたり、就活の概要とポイントについて解説を行いました。就活スケジュールが早期化・複雑化する中で、自己分析、企業研究、業界研究、面接対策など、やるべきことが多くなっています。就活はけっして容易ではありませんが、これから長く続く社会人生活を豊かに過ごすため、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
最後に読者の皆さんにお伝えしたい大切なことがあります。それは、「就活の合否結果にとらわれすぎない」ようにしていただきたいということです。仮に、第1志望や第2志望の企業で不合格となってしまったとしても、あまり落ち込まないようにしてください。しっかり準備して受けたとしても、面接官との相性など、選考には運の要素も多分にあるのです。
業界内を広くみれば、たくさんの優良企業が存在します。また、キャリアの軸を満たす企業は、他業界に存在することは珍しくありません。広い視野で捉えれば、A社にこだわらずとも、B社やC社でも、素晴らしいキャリアが待っていることに気がつくはずです。
また、当然ですが、会社に入ることが人生のゴールではありません。会社に入ることは、自分が目指す将来像を実現するためのプロセスにすぎません。
そして、その目指す将来像に至る道は無数ともいえるほどあるのです。第1志望や第2志望の企業に入れなかったとしても、長い目で見れば、人生に大きな影響はないことが大半でしょう。
一方、第1志望の企業から内定を得られたとすれば、それはとても喜ばしいことです。しかし、社会人として何かを成し遂げたわけではなく、ようやくスタートラインに立っただけです。これからが本番となります。よりよい社会人のスタートを切れるように、卒業までの時間を大切に過ごし、社会に出る準備をしましょう。
就職活動は、社会人としての「成長の好機」と捉えていただき、結果にとらわれすぎず、学びのプロセスを大切にしていただけると幸いです。