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第3回 キャリアの軸をつくる「自己分析」
皆さんは、就きたい仕事はすでに決まっているでしょうか。「就活を通じて見つけたい」、「関心がある業界が複数あるけど、まだ固まっていない」という方も、多いかもしれません。
就活は、皆さんがキャリアを飛躍させるうえで、最も大切な時期です。これは、転職活動と比較することでよく分かります。
通常、転職活動では前職までの経験に縛られることが多くなります。たとえば、経理職の経験者であれば経理として転職をする、人事職の経験者であれば人事として転職をするといった具合です。
一方、新卒の就活ではポテンシャル採用が一般的です。さまざまな業界・職種へ未経験にも関わらず、チャレンジが可能となっています。つまり、就活時が「最も広い選択肢」を持っている状態なのです。ぜひこの貴重な機会を活かして、自分が望む仕事に就きましょう。
今回は、自分がやりたい仕事を見つけるための第一歩となる「自己分析」について、解説していきます。
なぜ自己分析が必要なのか?
物事を選択する際には、評価軸を持つ必要があります。たとえば、たくさんの人がいたとしましょう。この人たちを順番に並べる方法は無数に存在します。身長順、体重順、年齢順、誕生日順、年収順などなど。当然ですが、評価軸によって、並ぶ順番は変わってしまいます。
仕事選びもこれと同様です。どのような評価軸を持つかによって、選ぶべき仕事や企業が変わります。もちろん、この評価軸は一人ひとりの価値観や志向によって、異なってきます。
就活における自己分析の目的は、この「自分のキャリアの評価軸(軸)」をつくることにあるのです。自分の中にある価値観を掘り下げることで、会社選びや仕事選びにおいて、自分が大切にしているもの=「軸」を探っていきます。
自分の評価軸を持たないと、自分に合った仕事や企業を選ぶことができません。そのため、自己分析が就活の第一歩、スタート地点となるのです。
ここで、「知名度の高い企業や、就職偏差値が高い企業を選んでおけば、間違いないでしょう」と考える人もいるかもしれません。
しかし、これは少し危険な考え方です。「知名度」や「人気がある」というのは、他人や世間からの評価に過ぎず、自分の中の価値観ではありません。有名企業だったとしても、自分がやりたい仕事とは異なる場合も、多々あるでしょう。
そうであれば、せっかく入社しても、仕事が苦痛になってしまうかもしれません。お金のためだけや、世間体のためだけに、長期間頑張ることはとても大変です。人生の多くの時間をかけることになる仕事を、世間一般のイメージを軸にして選んでしまうことのリスクは、ここにあります。
厚生労働省発表の『学歴別就職後3年以内離職率の推移』によると、新卒社員の約30%が3年以内に退職する状況が、25年以上も前から続いているのです。そして、この短期離職の最大の理由は、「仕事が自分に合わなかったため」となっています。就活時に、やりたい仕事をしっかりと選ぶことの大切さが、お分かりいただけることと思います。
おすすめの自己分析法~「好き・嫌い分析」
それでは、キャリアの軸を見つけるための「自己分析」はどのように行えばよいのでしょうか。
インターネットや就活本では、多種多様な方法が紹介されていますが、性格診断としての要素が強く、残念ながら職業選択には直結しないツールが多いのが実情です。
数多くのビジネスリーダーのキャリア形成を支援してきた私たちは、自分の「好き・嫌い」を中心に自己分析することをおすすめしています。
仕事は世の中に数え切れないほど存在しています。「仕事図鑑」のような書籍に載っているだけでも数百の職業がありますし、新たな仕事をつくりだすことも可能でしょう。就活生は、そのような無限ともいえる選択肢から仕事を選べるのです。わざわざ「好きではないもの」を選ぶのは、あまりにも勿体ないと言えます。
また、自分で選んだものが「好きなこと」であれば、長時間でも楽しく取り組むことができます。没頭し続けられれば、人よりも得意にもなれます。皆さんも部活や趣味、勉学などでも、そのような体験をしているのではないでしょうか。
そして、多くの方は、大学を卒業してから約40年以上にわたり働き、人生の大半の時間をかけることになります。「好きなこと」を仕事にできるか否かは、人生の豊かさに直結するでしょう。
しかし、「自分の好きなことが、まだ分からない」という方も多いかもしれません。そのような方に、ぜひ試していただきたい方法が「好き・嫌い分析」です。
「好き・嫌い分析」の具体的な手順
それでは、「好き・嫌い分析」の具体的な手順を説明していきます。自分でも気づいていなかったような、深い価値観を知ったり、自分に合っている意外な仕事を発見できたりすることでしょう。
ステップ1:好きのエッセンスを把握する
たとえば、自分が将棋を好きだとします。だからと言って「日本将棋連盟に勤めよう」といきなり決めつけてしまうのは、少々勿体ないです。
笑い話のように聞こえるかもしれませんが、「服が好きだからアパレル企業に勤める」「花が好きだから花屋に勤める」と考えてしまう人は、けっして少なくありません。
「好き・嫌い分析」では文字通り、まずは分析をします。将棋を好きな理由、魅力的なポイントを要素分解していくのです。
一口に将棋が好きと言っても、その理由は人によってさまざまです。よい作戦を用意して実戦で試すことが楽しいのか、勝負のスリルが楽しいのか、頭がちぎれるほど考えることが楽しいのか、最新の研究を学ぶことが楽しいのか、などなど。愛棋家同士でも、どの要素が好きなのかは異なるでしょう。
さらに、一人旅、友人と語りあうこと、映画鑑賞、家庭教師のアルバイト、数学など、将棋以外の好きなことについても、同様の手順で要素分解していきます。
このように分析をしていくと、共通項となる要素が浮かび上がってくるでしょう。もし、「よい作戦を用意して実戦で試すこと」「旅のプランを練ること」「相談ごとに対する解決策を考えること」「生徒の効果的な学習計画を考えること」といった要素があがっているのであれば、「作戦を考えること」が自分は好きなのかもしれません。
さらには、「生き方について友人と語り合うこと」「旅先で本を読んで将来について考えること」「人生に関する示唆が得られる映画を見ること」といった要素があがっているのであれば、「生き方について学ぶこと」が自分は好きなのかもしれません。
このようにして、共通項となる要素から、自分にとって大切な「好きのエッセンス」をつかんでいきます。分析が終わる頃には、数個の「好きのエッセンス」が抽出されていることでしょう。
この「好きのエッセンス」こそが、仕事を選ぶ際の軸となります。たとえば、Aの仕事は、好きのエッセンスが1つしか含まれていなかったが、Bの仕事は3つが入っているとすれば、Bの仕事を選ぶと良さそうだと予想が立ちます。好きのエッセンスを把握することで、より純度の高い好きなことを仕事に選べるようになるのです。
なお、自分の持つ「好きのエッセンス」を掴んだら、普段の生活のなかで意識してみることも大切です。もし、違和感があれば修正するということを繰り返す中で、“腹落ち”できるものがつかめてくることでしょう。
ステップ2:嫌いのエッセンスを把握する
次に「嫌い」の分析についてもみていきましょう。嫌いなことについても、同様の分析を行なって、「嫌いのエッセンス」をつかみます。
「大量の暗記が嫌い」「上司にへつらった者勝ちのカルチャーが嫌い」「大勢の人の前で話すのが嫌い」など、どうしても嫌いなことが皆さんもあることでしょう。
どうしても嫌いなことが分かれば、避けるべき仕事や環境を判断できます。仮に、好きのエッセンスを満たしている仕事だとしても、嫌いのエッセンスが含まれていれば、避けるのがおすすめです。
実は、嫌いを把握することは、好きを把握すること以上に大切なことなのです。仕事で大きなストレスを受けないため、短期間での離職を避けるためにも、「嫌いのエッセンス」を知っておくことは欠かせません。
一般的によく知られている「3つの輪」の自己分析などでは、嫌いを避けるという観点が抜け落ちてしまっています。しかし、心身ともに健全に働き続けるためには、非常に重要な観点なのです。もちろん、何もかも嫌いとワガママばかりを言っていては駄目なのは前提となります。
このようにしてつかんだ、好き・嫌いのエッセンスが「キャリアの軸」となります。志望業界や志望企業を探す際には、この軸に基づいて検討して頂ければと思います。
さらに詳しくキャリア設計の方法について知りたい方は、「キャリア設計のはじめ方」をご覧ください。
その他の自己分析法
「好き・嫌い分析」ができたら、「他己分析」や「自己分析ツール」を補完材料として、試してみるのも良いでしょう。
他己分析~ヒアリングによる自己分析
「他己分析」とは、他者に自分の印象や特徴を聞くことで、自分が何を大切にしているのかを知る方法です。
家族や友達など、自分のことをよく知る親しい人を中心に、ヒアリングすると有益です。自分の気持ちの浮き沈みの原因を、客観的な視点から教えてもらえたり、忘れていたようなエピソードから自分の価値観を知ることができたりします。下記の質問例を参考に聞いてみましょう。
自己分析ツール
オンラインで無料診断できるものや書籍など、現代はさまざまな自己分析ツールがあります。オンラインで実施できるものなどは、いくつかの質問に答えることで簡単に結果が出てくるので、試してみるのもよいでしょう。
ただし、このような自己分析ツールの使い方には気をつける必要があります。通常、分析結果は性格の特性が示されます。当然ながら、自分のやりたいことや本当に好きなことが、提示されるわけではありません。
仮に、地道な作業をコツコツと続けることができる性格だと分かったとしても、経理職に就くべきだということにはなりません。地道な作業を必要とする職業は、他にもたくさん存在しますし、そもそも経理の仕事に関心を持てないのであれば、避けたほうがよいでしょう。
このように、性格を把握する自己分析ツールを使っても、それがすぐに職業選択につながるわけではありません。あくまでも自己分析の「補助ツール」として使うことをおすすめします。
まとめ
就活を始めると、筆記試験や面接対策などの情報に、つい気を取られがちです。しかし、自己分析こそが、就活の出発点となります。焦らずに取り組んでいきましょう。
自己分析をないがしろにした学生が、就活の終盤に差し掛かってから、応募先の選択に失敗したと後悔するというケースは枚挙にいとまがありません。途中からやり直そうと思っても、時期を逃してしまい、受けたかった企業へのエントリーは困難になります。
このようなことが起きないよう、しっかりと自己分析に取り組んでいただければと思います。