コンサル業界地図と主要ファーム
コンサル業界の歩き方

第3回 コンサル業界地図と主要ファーム

前回まで、コンサル業界の魅力や、仕事についての解説をしてきました。しかし、コンサル業界と一口に言っても、その中には多数のコンサルティングファームが存在します。
就活の応募先として検討されるような有名ファームだけでも、数十社はあるでしょう。

また、コンサルティングファームには、それぞれの得意領域があります。その得意領域によって、「戦略系ファーム」「総合系ファーム」「組織人事系ファーム」「DX・IT系ファーム」などと、区分けができます。今回は、代表的な8つの領域をご紹介します。

 
医師や病院も、外科、内科、耳鼻科、眼科、歯科… などと、専門領域がわかれていますよね。それと同様です。

外資系戦略コンサルティングファーム

外資系戦略ファームは、経営者が抱えるさまざまな問題を解決するプロフェッショナルファームです。クライアントからの依頼に応じて、事業戦略、マーケティング戦略、新規事業戦略、組織改革などの支援をします。

外資系戦略ファームは、世界各国に多数の拠点を持っており、グローバル企業や大企業がクライアントです。代表的なファームであるマッキンゼー社は、米国、欧州、アジア、南米、東欧など世界60カ国以上に展開しており、世界中でコンサルタントたちが活躍しています。

また、仕事内容の魅力や報酬の高さ、さらには転職する際のネクストキャリアに恵まれることなどから、国内名門大学の学生や海外MBA取得者からとても人気が高くなっています。

代表的なファーム
  • マッキンゼー・アンド・カンパニー
  • ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)
  • ベイン・アンド・カンパニー
  • A.T.カーニー
  • アーサー・ディ・リトル・ジャパン
  • ローランド・ベルガー
 
マッキンゼー、BCG、ベインに代表される外資系戦略コンサルは、日本のビジネスリーダーから人気の転職先です。実際、大手広告企業や総合商社、官僚や医者など多様なバックボーンを持つ人たちが活躍しています。

日系戦略コンサルティングファーム

日系戦略ファームも、事業戦略、マーケティング戦略、新規事業戦略、組織改革など、クライアントの経営課題の解決を支援しています。

クライアントの企業規模は、外資系戦略ファームと比較してやや小さくなる傾向がありますが、プロジェクトで行なう仕事の内容は同様です。また、日系戦略ファームは、外資系戦略ファームの出身者が設立したケースが多く、実力主義であるカルチャーや組織運営の点でも、大きな差はありません。

一方、ドリームインキュベータやYCPのように、自社でベンチャー企業に投資をして、育成するという活動を行なうファームもあります。この点は、外資系戦略ファームとは異なる特徴と言えるでしょう。

代表的なファーム
  • ドリームインキュベータ
  • 経営共創基盤
  • ピー・アンド・イー・ディレクションズ
  • YCP Japan
  • コーポレイト ディレクション

財務系コンサルティングファーム(FAS)

企業の経営では、資金の管理がとても大切です。商品を仕入れるのにも、人を採用するのにも、工場を建てるのにも、資金が必要となります。また、資金が足りなくなれば、取引先や社員に支払うお金が足りなくなり、倒産してしまいます。「財務」とは会社の経営に必要な資金を算定して、資金の調達を行ったり、管理したりする仕事です。

財務系ファームは、このような企業の財務や税務に関するアドバイスに強みを持っています。なお、財務系ファームはFAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)とも略されます。

また、財務に関する知見を持つFASのコンサルタントは、企業買収のアドバイスにも精通しています。現代では、企業が成長のために他企業を買収することは珍しくありません。そのため、FASの活躍の場はますます広がっているのです。

新聞やテレビで話題になるような、大規模なM&A(合併や買収)に、関わることもあります。

FASコンサルタント(30代前半)

代表的なファーム
  • KPMG FAS
  • デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー
  • PwCアドバイザリー

財務に関する知見が必要なので、会計事務所を母体とするファームが強いです。なお、「公認会計士」の資格を持っていなくても、入社できます。

FAS コンサルタント(20代後半)

組織人事系コンサルティングファーム

組織人事系ファームは、クライアントの組織づくりを支援しています。具体的には、評価制度や報酬制度の設計、組織風土の改善などのプロジェクトを行ないます。

どのような企業でも、働く社員がいなければ、成り立ちません。そのため、社員が定着して、しっかりと働いてくれるように、納得感のある評価の仕組みをつくったり、社員が満足するような報酬を支払うルールをつくったりすることは、とても大切なのです。

トップクラスの成績をあげるチームは、部員のモチベーションが高く、情熱的な雰囲気であることが多いでしょう。皆さんも部活などで経験しているかもしれません。実は、会社も同様で、組織内の雰囲気やカルチャーが大切なのです。そのため、組織人事系ファームでは、組織風土の改革を支援することもあります。

働く人を幸せにしたい、良い組織をつくりたいと思っている方にこそ、フィットする仕事だと思います。

組織人事系ファーム コンサルタント(20代後半)

代表的なファーム
  • マーサー・ジャパン
  • コーン・フェリー・ジャパン
  • ウイリス・タワーズワトソン

DX・IT系コンサルティングファーム

DX・IT系コンサルファームは、IT活用に関わるアドバイスに強みを持つファームです。

現代のビジネスにおいて、ITの活用は必要不可欠です。例えば、AIを活用することで、100人で行なっていた作業が10人で済むようになるといった効率化を図ることができるでしょう。また、ITを活用することで、アマゾンやYouTube、ネットフリックスのような新しいビジネスを作ることもできます。

最近では、生成AI、電子マネー、ドローンなどの新しいデジタルツールも、次々と登場しています。クライアントは、これらの最先端ツールを使った経営の効率化を望んでおり、デジタル化対応(DXと呼ばれます)のニーズは右肩上がりです。そのような背景もあり、DX・IT系コンサルファームは急速な成長を遂げています。

「多くの産業でデジタル化が進むなかDX・IT系コンサルが急成長」のイラスト
代表的なファーム
  • ガートナージャパン
  • キャップジェミニ
  • 日本アイ・ビー・エム(IBM)
  • フューチャー

総合系コンサルティングファーム

総合系コンサルティングファームは、企業の戦略、財務、組織人事、ITなど、さまざまな問題を解決するファームです。また、自動車業界、金融業界、消費財業界、エネルギー業界、ヘルスケア業界など、業界別の専門チームも用意されています。

総合病院のように、さまざまな領域のプロジェクトを扱っています。企業の戦略立案からITの導入まで、一貫して支援できるのが強みです。

総合系ファーム コンサルタント(30代前半)

扱うコンサル領域がとても広いため、組織規模も非常に大きいのが特徴的です。代表的なファームのひとつであるアクセンチュアは、東京オフィスだけでも約2万人。グローバルでは、なんと約70万人もの陣容となっています(2022年3月)。

一方、戦略系ファームや組織人事系ファームの東京オフィスは、数十名から数百名です。規模にかなりの違いがあることが分かるでしょう。

また、この規模の大きさや豊富な資金力をいかして、他のコンサルファームを買収することもあります。PwCコンサルティングは戦略ファームであるブーズを買収し、デロイトは戦略ファームであるモニターグループを買収しています。

なお、総合系ファームはIT活用の支援にも精通しているため、DX・IT系コンサルファームと同様に、クライアントのデジタル化対応のニーズを受けて、急拡大しているファームが多くなっています。

「総合系ファームには、総合病院のようにさまざまな領域の専門家が揃っている」のイラスト
代表的なファーム
  • アクセンチュア
  • PwCコンサルティング
  • デロイトトーマツコンサルティング
  • EYストラテジー・アンド・コンサルティング
  • KPMGコンサルティング
  • アビームコンサルティング
  • クニエ

シンクタンク

シンクタンクは、政治、経済、経営、科学などさまざまな領域の専門家が集まるプロフェッショナルファームです。

大手の民間系シンクタンクは、「経営コンサル部門」、「ITコンサル部門」、「官公庁向けのリサーチ部門」「エコノミスト部門」など複数の部門にわかれています。幅広い領域のサービスを提供できる体制は、総合系ファームと同じといえるでしょう。

経営コンサル部門では、戦略コンサル、マーケティングコンサル、組織人事コンサルなど、他ファームと同様のコンサルティングを実施しています。一方、リサーチ部門では、官公庁を主なクライアントとして、政策に関する調査や提言を行なっています。

最近では、経営コンサル部門と官公庁向けのリサーチ部門が共同して、社会課題解決やSDGs関連のプロジェクトを行なうことも珍しくありません。

代表的なファーム
  • 野村総合研究所
  • 三菱総合研究所
  • 三菱UFJリサーチ&コンサルティング
  • 日本総合研究所
  • NTTデータ経営研究所

業界特化系コンサルティングファーム

業界特化系ファームは、製造業、ヘルスケア、エネルギー、金融、病院など、特定の業界に専門性を持つファームです。

特定の業界に高い専門性を持ち、その領域に特化したサービスを提供しています。対象業界での勤務経験を持つ、中途採用で入社するケースが多いファームです。

代表的なファーム
  • エクスポネンシャルデザイン
  • 経営共創基盤 ものづくり戦略カンパニー
  • KPMGヘルスケアジャパン
  • IQVIAソリューションズ ジャパン
「コンサル業界カオスマップ」の図表

まとめ

今回は、コンサルティングファームの代表的な8つの領域について解説しました。

しかし最近では、この垣根は少しずつ薄れてきています。クライアントからの要望にあわせて、各ファームのサービス内容が進化しているのです。戦略系ファームでもIT活用に関するアドバイスをしたり、組織人事系ファームであっても戦略に関する提言をしたりするようになってきています。本章での解説は、おおまかな区分けとしてご理解ください。

第4回では、気になっている方も多い「コンサルタントの収入とライフスタイル」について解説します。

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著者プロフィール
渡辺 秀和
CareerPod編集長
渡辺 秀和
コンコードエグゼクティブグループ|代表取締役CEO
戦略コンサル、外資系企業の幹部などへ1000人を越えるビジネスリーダーの転職を支援したキャリア設計の専門家。「日本ヘッドハンター大賞」初代MVP受賞者。 著書:『未来をつくるキャリアの授業』(東京大学でのキャリア設計の教科書に指定)

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