ひとつの企業だけでなく、業界全体を大きく変えるようなプロジェクトを提案することもあります。パートナーになって、コンサルタントという仕事の面白さをますます感じています。
パートナー(30代後半)
「収入が高いこと」は、コンサルタントの仕事の魅力のひとつです。
「具体的にはどの位の収入を得ているのか?」「その分、仕事はハードなのでは?」といった点が気になっている読者の方も多いことでしょう。また、「若い頃だけでなく、30代、40代となった頃の収入についても知りたい」という方もいるかもしれません。
そこで今回は、コンサルタントの役職別の収入や仕事内容、ライフスタイルをご紹介したいと思います。
通常、企業の中には、社長、取締役、部長、課長、係長、一般社員などといった役職があります。そして、役職が上がるにつれて仕事内容が難しくなり、同時に年収も上がるのが一般的です。
コンサルファームの中にも、それと同じように役職があります。呼称はファームごとにそれぞれですが、おおむね以下の4階層に分けられています。
この役職が上がるスピードがとても早いのが、コンサル業界の特徴のひとつです。それぞれの役職の職務内容と、年収を見ていきましょう。
パートナーは、一般的な企業の経営幹部に当たります。パートナーの主な役割は、「ファームの運営」、「プロジェクトの営業と統括」の2つです。
ファームの運営とは、ファーム全体の戦略を考えたり、業績を管理したり、コンサルタントの採用や育成の仕組みを考えたりするといった仕事です。他の企業の経営者と同様と言ってよいでしょう。
一方、特徴的なのが、プロジェクトの営業活動です。「営業は、若手社員がやるものでは?」と疑問に思われた人もいるかもしれません。しかし、コンサル業界では事情がやや異なります。
ボールペンや自転車のような「物」を売るのであれば、目に見えるため、買い手に商品の価値を伝えることは比較的簡単です。場合によっては、使い心地を試してもらうこともできますし、他社の商品と比べることで、値段の妥当性も伝わります。
しかし、コンサルティングファームの商品は、目に見えません。しいて言えば、プロジェクトの最終報告書が、クライアントに渡す商品と呼べるものです。ですが、営業をしている段階ではそれもありません。しかも、プロジェクトには企業の将来がかかっているうえに、値段も高額となります。
そのため、プロジェクトを依頼されるためには、「この人に任せれば、良い解決策を提案してくれるだろう」と企業の経営者から信頼される必要があるのです。当然、営業を担うパートナーには、専門領域における知見や豊富な経験に加え、人間的な魅力も求められます。コンサル業界の営業は、とても難度が高い仕事のため、パートナークラスが担っているのです。
ひとつの企業だけでなく、業界全体を大きく変えるようなプロジェクトを提案することもあります。パートナーになって、コンサルタントという仕事の面白さをますます感じています。
パートナー(30代後半)
プロジェクトが開始した際には、パートナーは総責任者として加わります。しかし、手を動かして作業をすることはほとんどありません。プロジェクトメンバーに大まかな方向性を示し、クライアントの経営者と良好な関係をつくることが、パートナーの役割となっています。
パートナーになることができるのは、30代後半~40代であることが多くなっています。
ただし、コンサルティング業界は実力主義であるため、早い人であれば、30代前半で抜擢されることもありえます。
戦略系ファーム:3000万~1億以上
総合系ファーム:2000万~1億以上
SDGs時代の新しい経営手法を、世の中に伝えるために、書籍を出版したり、セミナーで講演する機会も多いです。それがきっかけで、有名な経営者から問い合わせを頂くこともあり、やりがいを感じています。
パートナー(40代前半)
マネージャーは「現場のリーダー」的な存在です。プロジェクトの進行の責任者であり、プロジェクトメンバーに対して具体的な道筋を示すことが主な仕事となっています。
スパイ映画「ミッション:インポッシブル」で言えば、現場を仕切るイーサン・ハント(トム・クルーズ)が、マネージャーに近いイメージでしょうか。
マネージャー(30代前半)
マネージャーには、プロジェクトメンバーに的確な指示を出し、最終報告書の「提案の質」を高めることが求められています。また、メンバーの作業がスケジュール通りに進むように、サポートすることも大切です。調査には費用もかかるため、プロジェクトが適正な利益を出せるように、それらの予算の管理も行なわなくてはなりません。
プロジェクトが成功すれば、クライアントから感謝されますが、一方でクライアントの矢面に立つのもマネージャーです。クライアントが抱えている問題を解決するために、プロジェクトメンバーや時間を上手に活用できるかどうかが、マネージャーの腕といえるでしょう。
マネージャーはプロジェクトの要となる重要なポジションです。そのため、コンサルスキルを十分に習得した、30代前半〜30代後半で就くことが一般的です。新卒で入社し、その後の評価が高い場合、20代後半で抜擢されるケースもあります。
戦略系ファーム:1,500万~2,500万
総合系ファーム:1,000万~1,500万
戦略系ファーム:2,000万~3,000万
総合系ファーム:1,500万~2,000万
プロジェクトを通じて、クライアントやメンバーと連帯感が生まれるのがとても楽しいですね。ただし、マネージャーが適切な指示をできないと、メンバーが混乱し、無駄な作業をしてしまうこともあります。責任は重いです。
マネージャー(30代後半)
コンサルタントは、プロジェクトにおける実働部隊です。マネージャーの指示のもとで、調査や分析、資料の作成などの作業を主として担当します。
依頼された作業の具体的な進め方については、コンサルタントが自分で考えます。どのような資料が必要となるかを考えて収集したり、インタビュー対象者を選定して実施したりするのは、コンサルタントの仕事です。ある程度の裁量を持って仕事ができますが、適宜マネージャーに相談したり、報告したりすることは必須となります。
コンサルタントになって、クライアントの経営幹部へプレゼンテーションする機会もあります。まだ緊張しますが、うなずいて頂けることも増えてきて、自身の成長を感じています。
コンサルタント(20代後半)
また、アナリストへアドバイスするのも、先輩であるコンサルタントの大切な役割です。
経験の浅いアナリストに対して、情報収集や分析の仕方を教えます。彼らへ指示を出したり、分かりやすくアドバイスしたりする経験は、コンサルタントがマネージャーへ昇格した際に、役立つ経験となるでしょう。
コンサルタントに昇格できるのは、アナリストで入社した2~4年後となります。そのため新卒で入社した場合は20代半ば、第二新卒で入社した場合は20代後半でコンサルタントになるケースが一般的です。
戦略系ファーム:1,000万~1,500万円
総合系ファーム:700万~1,000万円
中間報告や最終報告の直前は、タクシー帰りとなることが珍しくはありません。プロジェクトが終了すると、1週間くらいの休暇をとって海外でのんびり過ごす人も多いです。
コンサルタント(20代後半)
アナリストは、コンサルタントのサポート役です。マネージャーやコンサルタントの指示のもと、情報収集と分析、資料作成を行ないます。新卒、第二新卒で入社した場合は、アナリストからスタートすることになります。
先輩のコンサルタントに同行してクライアントへのインタビューをしたり、ミーティングの議事録を作成したりもします。データベースやインターネットでの調査では足りない場合は、外部の専門機関や国立図書館などへも行って資料を集めることも、アナリストの仕事です。アナリストが収集した情報や作成した資料がベースとなり、プロジェクトが進んでいきます。
アナリストはコンサルタントの修行時代。はじめて議事録を作成したときは、先輩コンサルタントからの“赤入れ”(修正)で、自分が書いた文がひとつも残らずに焦りました。丁寧に指導して頂けるので有り難いです。
アナリスト(20代前半)
地味なように見えますが、収集した情報は「提案の根拠」となるものですから、とても重要な作業です。また、情報収集、分析、資料作成のスキルは、コンサルタントとして活躍するうえで不可欠といえます。それだけでなく、将来、起業家や経営者を目指す場合にも、役立つでしょう。アナリスト時代の経験は、その後の自身のキャリアのためにも、貴重なものとなるのです。
戦略系ファーム:600万~1,000万円
総合系ファーム:500万~800万円
Word、Excel、PowerPointなどは、大学生のうちに使い慣れておくとよいと思います。また、ビジネス文書を書くスキルも大切です。長期インターンに参加して、基本的なスキルを身につけておくのがおすすめです。
アナリスト(20代前半)
コンサルタントとして働くと、どのような生活になるのでしょうか。ここからは、コンサルタントのライフスタイルについてみていきましょう。
コンサルタントは、働く“時間”の長さよりも、クライアントや上司から期待されている“成果”を出すことが重視される仕事です。そのため、勤務時間に関する自由度は高く、フレックスタイム制を導入するファームが多くなっています。最近では、リモートワークも導入されており、その自由度がさらに高くなっているといえるでしょう。
ただし、コンサルタントはチームで仕事をしています。そのため、進捗の報告や社内ミーティングのタイミングなどは、上司や先輩の指示で決まることが多くなります。
また、自由度が高いといっても、働く時間が短いわけではありません。中間報告や最終報告が近づくと、仕事が深夜にまで及ぶこともあります。必要なときに、必要なだけ働くというのがコンサルタントの働き方なのです。
ただし、プロジェクトが終われば、1,2週間の長めの休みをとって英気を養うコンサルタントも多く、緩急がはっきりしているという特徴があります。
また、クライアント企業のオフィスで仕事をするプロジェクトもあります。その場合は、自身が在籍するファームへ出社せずに、クライアント企業へ直接出社し、そこから帰宅します。
今回のプロジェクトでは、クライアント企業に常駐して、仕事をしています。毎日、クライアントの皆さんと会って仲良くなれるので、私はこのスタイルが好きです。
コンサルタント(20代後半)
ファームに入って間もない頃は、調査や資料作成にまだ慣れていないため、平日に作業が終わらず、休日に仕事をする必要があるケースもあるでしょう。もちろん、仕事に慣れれば、早く終えられるようになります。入社したての頃は、コンサルタントとしての修行期間と考えて、努力することが大切です。
また、一緒にプロジェクトをしている上司や先輩コンサルタントと、仕事終わりに会食に行くことも珍しくありません。先輩たちから仕事やキャリアに関する考えなどを聞くこともできて、貴重な機会となるでしょう。
自分が仕事に行き詰まっているときに、活躍している先輩たちも同じような経験があったと聞くと、気持ちが楽になって、翌日からまた頑張ろうと思えます。
アナリスト(20代後半)
今回は、コンサルタントの収入やライフスタイルについて紹介しました。なお、紹介した役職ごとの役割や収入は、あくまでも「目安」です。ファームやプロジェクトによって多少異なりますので、ご注意ください。
コンサルタントの仕事はけっして容易ではありません。しかし、そのような仕事を乗り越えるからこそ、多くの企業から必要とされる、貴重な能力を身につけられるのです。
第5回では、コンサルタントは仕事を通じて、具体的にどのような能力が鍛えられるのかについて解説します。