- 「最近、自社の商品の売上が伸び悩んでいる。どうすればいいのだろう?」
- 「高齢者をターゲットにした、新しい商品をつくりたい。何がいいのだろう?」
- 「社員が活躍しやすい組織にしたい。どんな評価制度にするといいのだろう?」
- 「仕事の効率をあげるために、AIやロボットを導入したほうがいいのだろうか?」
- 「生産量を増やすために、新しい工場を建設したい。大きな投資となるが大丈夫か?」
- 「現地の企業を買収して、海外へ進出したい。どうすればよいだろうか?」
第2回 コンサルタントの仕事とは
前回では、名門大学の学生から人気を集めるコンサル業界の概要と魅力を紹介しました。
企業経営にかかわることができ、やりがいのある仕事なので、関心を持たれた方も多いのではないでしょうか。
第2回の講座では、コンサルタントの仕事内容について、さらに具体的に紹介していきたいと思います。
コンサルタントの仕事は、企業の抱える問題を解決すること
コンサルタントの仕事は、経営者の相談に乗ったり、企業の経営についてアドバイスをすることだと解説しました。それでは経営者や企業は、なぜコンサルタントに相談をするのでしょうか。
企業は、働いている社員のためにも、成長して利益をあげる必要があります。経営者は、そのためにさまざまな問題を解決しなければなりません。
経営者や企業は、これらの問題をどう解決するのでしょうか。「現地の企業を買収して、海外へ進出する」というテーマを例にして、考えてみましょう。
まず、進出しようとする国の政治や経済の状況、将来の発展性などを把握する必要があります。また、買収にふさわしい企業を探し出し、その企業の実態がどのようになっているのかをくわしく調査しなければなりません。
さらに、どの程度の金額で買収するのが妥当なのかを検討します。しかも、企業を買収する際は、数百億円、数千億円といった資金が必要となることもあります。資金を集める方法も考えなければいけません。
このように、企業が取り組む問題はとても複雑です。適切な解決策を考えることは容易ではありません。そのため、企業の「参謀」として、高度なノウハウと専門性を持つコンサルタントが求められているのです。
コンサルタントの仕事「プロジェクト」とは
コンサルタントは、企業からの依頼を受けたテーマに関する問題解決に取り組みます。
この活動を「プロジェクト」と呼びます。また、プロジェクトを依頼してきた企業を「クライアント」と呼びます。
プロジェクトの期間はさまざまですが、3カ月~6カ月程度であることが一般的です。コンサルタントは、その期間内で解決策を提案することが求められます。
参加するコンサルタントの人数は、プロジェクトのテーマや規模によって異なります。2、3人程度のプロジェクトもあれば、大規模なプロジェクトでは100人を超えるようなこともあるのです。
簡易に示すと、以下のような手順でクライアントの問題解決を行うことになります。ただし、実際のプロジェクトでは、分析をしていく中で、追加の調査が必要になることも珍しくありません。
この手順は病院での診察と似ています。「熱がある」(問題)からといって、「抗生物質を飲めば良い」(解決策)と、医師からいきなり言われませんよね。風邪かもしれませんし、どこかの内臓が悪いのかもしれません。
まずは、問題を引き起こしている原因が何なのか、解決すべき課題は何なのかを「調査」し、「分析」してから、解決策を考えていく必要があります。そうしないと、誤った解決策を提案してしまう可能性があるのです。
プロジェクトが終了すると、コンサルタントは次のプロジェクトを社内で探して、参加していきます。参加するプロジェクトの数は、1つの場合もあれば、同時並行で2~3つに参加するケースもあります。さまざまなテーマに関心を持つ、好奇心旺盛な人にフィットする仕事と言えるでしょう。
プロジェクトの流れ
次に、一般的なプロジェクトの流れを具体的に見てみましょう。
1:営業活動
プロジェクトを依頼してもらうために、コンサルティングファームも営業をしています。営業をするのは、ファームの経営幹部である「パートナー」の仕事です。
パートナーは、企業の経営者とミーティングをしたり、会食をしたりする中で、どのような悩みを抱えているのかを把握します。そして、その悩みを解決するためのプロジェクトを提案します。
また、パートナーは、自分の専門分野に関する書籍を出版したり、講演会へ登壇をしたりします。それらをきっかけに、そのテーマに関心がある経営者から、プロジェクトを依頼されることもあるのです。
2:クライアントからの依頼
パートナーからの提案内容に、クライアントの経営者が納得すると、プロジェクトが依頼されます。このときに、プロジェクトの期間や価格なども決定して、両社間で契約が結ばれることになります。いよいよプロジェクトのスタートです。
「20代の女性に自社商品がもっと売れる方法を考えてほしい」「高齢者をターゲットにした新しい事業を考えてほしい」など、さまざまなテーマで依頼がきます。
コンサルタント(30代前半)
3:プロジェクトチームの立ち上げ
プロジェクトがはじまると、ファーム内でプロジェクトに参加するメンバーが集められます。必要な人数を揃えることはもちろんですが、各メンバーの専門性も考えたうえで、チームをつくることが大切です。
スパイ映画でも、ミッションを成功させるために、必要なスキルを持ったメンバーを集めますよね。それと似ています。
コンサルタント(20代後半)
プロジェクトチームの総責任者は、パートナーになります。また、日々のプロジェクトをとりまとめるのは、「マネージャー」という現場の責任者が担当します。若手のメンバーたちは、マネージャーの指示のもとで、調査や資料の作成を行ないます。
4:キックオフミーティング
キックオフミーティングとは、コンサルティングファームのプロジェクトチームと、クライアントの経営者やキーマンの社員が集まる、初回のミーティングです。
プロジェクトで達成したい目標や、プロジェクトでやるべきこと、スケジュールなどを確認する、重要なミーティングとなります。コンサルタントとクライアントの間で、理解がズレたままプロジェクトが進むと、あとでトラブルが起こる原因となってしまいます。
5:調査・分析
キックオフミーティングの後、プロジェクトメンバーは、必要な資料や情報を集め、その情報をもとに分析を行います。
先ほどあげた、病院での診察の話と同様となります。適切な解決策を考えるためには、まずは、クライアントの状況を正確に理解し、解決すべき課題を把握することが大切です。
具体的には、クライアントの業績はどのような状況なのか、ターゲットとする消費者はどのようなニーズを持っているのか、ライバル企業(競合企業)は何をしているのか、といった情報を収集して、分析をします。
さらには、消費者にアンケート調査をしたり、ヒアリングをしたりもします。また、集められたデータを統計的な手法で、分析することもあります。クライアントの財務状況を分析したり、海外企業の成功事例も調べたりします。
大学時代に勉強した「統計分析」、「財務分析」、「英語」や、ゼミで資料を読み込んだ経験などが役立ちました。
コンサルタント(20代前半)
6:中間報告
調査・分析した結果をもとに、報告書を作成。クライアントと中間報告会を行ないます。
プロジェクトの経過の報告と、今後の方向性のすり合わせをします。
報告を受けたクライアントからは、「ターゲットの消費者には、こんなニーズがあったのか」、「ライバル企業の商品は、こんなところが人気の秘密だったのか」などという驚きの声があがったりもします。
60代の社長へ資料の説明をして、大汗をかきましたが、とても良い経験でした。成長する機会に恵まれた仕事だと思います。
コンサルタント(新卒1年目)
クライアントから「もっとこういう点を詳しく調べてほしい」といった追加の依頼を受けることもあります。そして、それらの話をもとに最終報告に向けて、作業を続けることになります。
7:解決策の立案
中間報告での打ち合わせを踏まえて、追加の調査や分析を行ない、解決策を考えます。
提案する解決策は、クライアントが実行できるものでなければなりません。そのため、クライアントの経営者や社員と、定期的に打ち合わせを行ないながら、慎重に進めていきます。
8:最終報告
今まで行なった調査や分析の内容、作成した解決策をまとめた、最終報告書を作成します。
良い解決策をつくっても、クライアントの社員に実行されなければ、意味がありません。
分かりやすく、読み手の心に届くように、一つひとつの文や図にこだわり抜いて、報告書を作成していきます。
そして、作成された報告書をもとに、クライアントの経営者と社員へ最終報告会を行ないます。プロジェクトのクライマックスとも言えるでしょう。
「提案されたプランをぜひ実行したい」とクライアントの経営者に喜んでいただけたときが、一番うれしいですね。
マネージャー(30代後半)
最終報告前は、作業が深夜までかかり、タクシー帰りとなることもあります。でも、良い報告書が作成できると、疲れもふっ飛びます。
コンサルタント(20代後半)
9:プランの実行支援(新プロジェクト)
一般的には最終報告がプロジェクトの終了です。しかし、提案されたプランを実行する際にも手伝ってほしいという、追加の依頼がくることがあります。
提案内容が認められたうえに、新しいプロジェクトを獲得できたということですので、コンサルタントとしては、とても嬉しいことです。
実行支援のプロジェクトでは、プランを実行する段階で発生する新たな問題を解決したり、クライアントの社員が効率的に働けるようにマニュアルを作成することも、コンサルタントの重要な仕事となります。
まとめ
今回の講座では、コンサルタントの仕事について解説しました。プロジェクトの流れがイメージできたでしょうか。
なお、ご紹介した内容は、標準的なプロジェクトを簡易にまとめたものとなっています。実際のプロジェクトの進め方は、クライアントからの相談内容や要望によってさまざまです。
さて、第3回の講座では、コンサル業界を得意領域ごとに分類して、代表的なファームを紹介したいと思います。
病院も、内科、外科、眼科、耳鼻科…といったように、専門領域や得意領域がわかれていますよね。それと同様で、コンサルティングファームとひと口にいっても、それぞれの得意領域は異なっているのです。自分が特に関心がありそうな領域を見つけてみましょう。