コンサル業界で鍛えられる能力
コンサル業界の歩き方

第5回 コンサル業界で鍛えられる能力

コンサル業界の人気が高い理由の1つに「若いうちから経営幹部を目指せる」ということが挙げられます。

一般的な企業では、経営幹部になることができるのは40~50代が大半です。それに対して、コンサル経験者であれば、20~30代でも経営幹部を目指すことができるようになります。

なぜ、そのようなことが可能なのでしょうか。今回はコンサル業界で鍛えられる能力について解説したいと思います。

コンサルの仕事で身につく能力

コンサルタントの仕事で身につく能力はさまざまですが、代表的なものとしては、「問題解決能力」、「リーダーシップ」、「プロフェッショナル・マインド」の3つが挙げられます。以下、それぞれについて詳細にみていきましょう。

「コンサルタントは経営幹部に必要な3つの能力が鍛えられる」のイラスト

1. さまざまな業界で役立つ「問題解決能力」

一般的な企業では、20代という若さで、企業の経営改善に関わることはまれです。また、幸運にもそのような経験ができたとしても、自分が勤める企業のみが対象でしょう。

一方、コンサルタントは、1つの企業だけでなく、さまざまな業界の企業から経営改善の依頼を受けます。それらの経営改善に関わることで、「こういった手法は◯◯業界では通用したが、××業界ではうまくいかない」、あるいは「このようなアプローチは、いろいろな業界で有効だ」といったことが分かるようになります。そのため、コンサルタントは特定の業界や固有の企業に縛られない、問題解決能力を身につけることができるのです。

プロジェクトを数多く経験することが大切です。
「このアプローチは多くの企業で通用する」というコツがつかめたり、「ここに問題がありそうだ」という直観が働くようになってきます。

マネージャー(30代前半)

また、コンサルタントは経営者からの悩みを解決することが仕事です。日常的に、経営に関する問題解決を繰り返し行なっています。3年も在籍していれば、10本以上のプロジェクトを担当することでしょう。そのため、コンサルタントは若くても、問題解決に関する経験を豊富に持っているのです。

このようにして、コンサルタントは仕事を通じて、さまざまな業界で評価される問題解決能力を培うことができます。

「コンサルタントは若くても経営課題の解決に携わった場数が豊富」のイラスト

2. 「リーダーシップ」

企業の経営を改善するためには、社内のさまざまな人に協力してもらう必要があります。
経営者が良いプランを発表しても、現場の社員が動いてくれなければ実現はできません。

「こういう新しい商品を開発しよう」と経営者が言っても、商品開発部長が「それは難しいです」と強固に反対すれば、プランはなかなか前進しないでしょう。

コンサルタントの場合も同様です。プロジェクトを成功させるためには、クライアント社内のさまざまな人の協力が不可欠となります。しかも相手は40、50代の年配の方であることも珍しくありません。さらに、コンサルタントはクライアント社員の上司ではありません。命令して動かすことも出来ないため、現場社員の協力を得ることがいっそう難しいのです。

たとえば、プロジェクトでは、忙しく働いている現場社員の皆さんに時間を割いてもらって、インタビューをしたり、膨大なデータを整理して提出してもらったりすることも珍しくありません。

また、今までの仕事のやり方を変えることを、コンサルタントが提案するケースもあります。新しいやり方を覚えるのは、誰にとっても面倒です。当然、現場の社員には抵抗感が生まれますが、納得頂けるようにコミュニケーションしなければなりません。

かけ出しの新米コンサルタントが、配慮の足りない伝え方をして、クライアントの年配の社員から反発されるというのは、「コンサル業界あるある」です。

コンサルタント(20代後半)

クライアントの社員に協力して頂くためには、論理的に分かりやすく説明することが必要です。しかし、それだけでは人は動きません。感情や立場にも配慮した高度なリーダーシップが不可欠となります。

コンサルタントは仕事をしていく中で、立場や年齢を越えて人を巻き込める力が磨かれていきます。そして、このようなリーダーシップは、将来経営幹部として活躍していくうえでも大切な力となるでしょう。

「立場や年齢を越えて人を巻き込むリーダーシップが培われる」のイラスト

3. 「プロフェッショナル・マインド」

コンサルタントは資格が不要ですが、医師や弁護士、公認会計士などと同様の専門職、プロフェッショナルです。自分の考えたことや提案によって、クライアントの抱える問題を解決する仕事となります。

しかも、優秀な大企業の経営者が、わざわざ高額な料金を支払って、相談をしてくるような難しい問題です。当然、簡単に解決することはありません。そのため、困難な状況においても、クライアントのために粘り強く取り組むことがコンサルタントには求められます。

さらに、ビジネスの世界や世界経済、科学技術は、どんどん変化しています。仕事の合間のすきま時間や休日を活用して、最先端の知識やスキルを学び続ける向上心もコンサルタントには必須となるでしょう。残業代が出ないなら仕事に関することはしない、といった発想とは全く異なる環境です。

鍛え上げた高度なスキルを用いて、クライアントや社会のために最後まで粘り強く全力を尽くす心構え――「プロフェッショナル・マインド」が身についていること。これもコンサル経験者が、多くの企業で高い評価を受ける理由のひとつです。

最先端のビジネスについて学ぶことは、純粋に楽しいです。自分にとっては、“趣味”でもあります。活躍しているコンサルタントは、良い意味で公私混同をしていると思いますよ。

コンサルタント(20代後半)

番外編「資料作成の能力」

ここまで、コンサルタントが仕事を通じて身につけられる、企業経営に必要な能力について解説してきました。

しかし、コンサルタントの仕事を通じて鍛えられる能力は、それだけではありません。実は、経営者になる/ならないに関わらず、社会人にとって大切な能力を鍛えることができるのです。

それは「資料作成の能力」です。コンサルタントは、報告書やプレゼンテーションなどの資料を作成するスキルを、仕事の中で叩き込まれます。これは、クライアントに提案内容を理解してもらい、実行してもらうために大切なことです。

「どのような文章であれば、聞き手の気持ちに届くか」、「どのようなグラフ、表を入れると、分かりやすいか」といったことを徹底的に考え、作成します。

たった1つの文章、1枚の資料を作成するのに、幾度も練り直します。現代は生成AIの登場もあり、負荷を減らすことができるとはいえ、容易ではありません。このような過程を経て、コンサルタントは資料作成のスキルを磨いていきます。

そしてこれは、実は多くの社会人にとって必須の能力ともいえます。仕事は、誰かと協力してやることがほとんどです。すべての人に対して、直接会って口頭で説明することはできません。どうしても資料で伝える必要があります。

また、資料が必要なのは、社内だけではありません。取引先へ営業する際にも、分かりやすい資料は必要です。資料作成の高いスキルがあるだけで、仕事のクオリティは格段に違うものとなるでしょう。

コンサルタントの修行時代に、資料作成については徹底的に鍛えられました。転職先の上司からも高い評価を受けています。一生モノのスキルかもしれませんね。

外資系企業 経営幹部/コンサル経験者(30代前半)

 

実は、資料をしっかりと作成できる人は、けっして多くはありません。その点、コンサル経験者は、資料作成能力もピカイチなので、経営幹部として中途採用しています。

(AI系ベンチャー企業 社長)

まとめ

社会に出て数年経つと、「会社の経営に必要なスキルをもっと学びたい」と感じて、MBAの取得に挑戦される方もいます。しかし、その必要性を感じないほど、コンサルタントは日常の仕事を通じて、経営に関する知見を習得し、問題解決スキルを体得していくことができます。

今回は、さまざまな業界で経営幹部として活躍するうえで役立つ能力が、コンサルタントの仕事で鍛えられることを解説しました。

それでは、コンサル経験者は、具体的にはどのような企業の幹部として抜擢されていくのでしょうか。第6回では、コンサル経験者が次の仕事として選ぶ主要な「ネクストキャリア」をご紹介します。

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著者プロフィール
渡辺 秀和
CareerPod編集長
渡辺 秀和
コンコードエグゼクティブグループ|代表取締役CEO
戦略コンサル、外資系企業の幹部などへ1000人を越えるビジネスリーダーの転職を支援したキャリア設計の専門家。「日本ヘッドハンター大賞」初代MVP受賞者。 著書:『未来をつくるキャリアの授業』(東京大学でのキャリア設計の教科書に指定)

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