選考対策②【ケース面接・人物面接編】
戦略コンサル内定への道

第4回 選考対策②【ケース面接・人物面接編】

ESや筆記試験、グループディスカッションの次は、いよいよ面接へ進むことになります。戦略コンサルの新卒採用では、面接は2〜4回程度実施されることが多いです。

内容は、人物面や経験を確認する「人物面接(以下、ビヘイビア面接)」と「ケース面接」となります。新卒の学生は職務経験を持たないため、ケース面接が中心で行なわれ、ビヘイビア面接はややコンパクトに実施される傾向があります。

ケース面接

ケース面接とは、特定のシチュエーションを想定して、面接官とディスカッションする形式の選考です。要領がつかめないと、コンサル適性が高い方であっても、落ちてしまうことは珍しくありませんので、注意しましょう。

「新幹線の中のコーヒーの売り上げを伸ばすには?」「自分がソニーのCEOだったらどうする?」といったお題を面接で出されて、皆さんは的確に答えられるでしょうか。

このようなケース面接のお題を初めて見た方の多くは、どのように答えるべきかさえ、よく分からないと思います。仮に、良いアイデアを思いついたとしても、論理的な回答でなければ面接官に受け入れられません。以下のような展開で失敗してしまうケースがよくみられます。

面接官「新幹線の中のコーヒーの売り上げを伸ばすには、どうすればよいと思いますか?」

 

就活生(コンサルタントは結論から話す……だったな)「○○をするとよいと思います」

 

「なぜ、そう考えるのですか?」

 

「ええっと……。それは、××だと思うからです」

 

「なぜ、そう思うのですか?」

 

「ええっと……。うーん」

ケース面接では、優秀なビジネスパーソンであっても、決して容易に回答できないような設問が投げかけられます。ましてやビジネス経験の浅い学生であれば、途方に暮れてしまうでしょう。

ケース面接における最重要ポイントとは

そもそも、この禅問答のような面接は、何のために行なわれているのでしょうか。実は、ケース面接突破するうえで最も重要なポイントは、この「ケース面接では何を見られているのか」という意図を適切に理解することにあるのです。それを踏まえないまま、書籍を読み込んだり、練習を積んだりしても、良い結果を得ることは難しいでしょう。

ケース面接は「ディスカッションパートナー」としての適性を判断するために行なわれています。頭の回転の速さや、ロジックツリー、3C、4Pなどのフレームワーク活用スキルばかりが重視されているのではありません。

知力のみならず、問題解決に対する粘り強さや協働するマインド、コミュニケーションスキルなどが、統合的に評価されます。ディベートのように議論で相手に勝とうとする人が、求められているわけではない点には、特に注意が必要です。この点を理解したうえで、練習をしていくと、ケース面接の通過確率が飛躍的に高まるでしょう。

ケース面接 4つのタイプ

ケース面接のテーマは多岐にわたりますが、4つのタイプに分類することができます。

タイプ① フェルミ推定

まず1つ目は、「フェルミ推定」と呼ばれるタイプです。フェルミ推定は、市場規模や店舗数などの数値を、知識からではなく論理的に推定する設問です。「中古携帯電話の市場規模を推定せよ」や「日本国内のハンバーガーショップの店舗数を推定せよ」といったテーマが出題されます。

実際にこれらの数字を知っている必要は一切ありません。日本や世界の人口や平均寿命など、常識的な数値をベースとしつつ、推定することが求められています。「前提の確認」など押さえるべきことがありますが、後述する対策本やCareerPodの記事をもとに練習を行えば、対応できるようになるでしょう。

なお、「市場規模を求めるケース」と「店舗数などを求めるケース」とでは、解法が若干異なります。両パターンをしっかりマスターしておきましょう。

タイプ② ビジネス系

2つ目は、「ビジネス系ケース」です。ビジネス系ケースは、コンサルティングファームが実際に取り組む課題に近く、企業が抱える課題を解決する問題となります。

具体的には、「新宿駅近くにあるスターバックス1店舗の売り上げを増やすには」「新潟県にあるスキー場の売り上げを増やすには」「〇〇社の社長だったら何をする」といったような出題がなされます。

フェルミ推定と同様に「前提確認」を行なったうえで、3Cや4Pといったベーシックなフレームワークを活用しながら、状況を整理したり、解決策を考えたりしていくとよいでしょう。これらのフームワークを自然な流れで使いこなすためには、慣れが必要です。対策本をもとに何度も繰り返し練習をしましょう。

タイプ③ 公共課題系

3つ目は、「公共課題系ケース」です。具体的には、「日本の犯罪を減らすには」や「次のオリンピックで日本のメダル獲得数を増やすには」といったテーマが出題されます。

一般的には、ビジネス系ケース問題に比べて出題頻度はやや低くなりますが、BCGやA.T.カーニーなどのファームではよく見受けられます。志望するファームの傾向をつかんで、対策を進めるとよいでしょう。

タイプ④ 抽象系

4つ目は、「抽象系ケース」というタイプです。このタイプでは、明確な問題解決を行うのではなく、あいまいな言葉の定義などについて議論が行われます。具体的には、「幸せとは何か?」「真のプロフェッショナルとは?」などといった出題がされます。

ビジネス系や公共系ともスタイルが異なり、取っつき難い印象が強いのではないでしょうか。つい思いつきの回答になりがちですが、重視されるポイントは他パターンと共通しています。出題頻度も以前に比べて高まっているようなので、しっかり対策をして臨みましょう。

ケース面接では、思いつきのアイデアベースの回答ではなく、抑えるべきステップを経て回答することがカギを握ります。詳細の対策については、下記のCareerPodシリーズもご覧ください。

ケース面接の対策時期と対策方法

ケース面接対策は、一朝一夕でできるものではありません。夏選考が本格化する3年生4月より前、可能であれば2年生の冬からコツコツと演習を積み重ねることをおすすめします。多くの練習問題を解いておくことは、本番での自信にもつながります。

また、実際のケース面接は、面接官とのインタラクティブなコミュニケーションとなります。自分で回答案を考えるだけではなく、友人や内定者の先輩などに面接官役になってもらって、練習するようにしましょう。

ホームページ内で、具体的な対策方法や意識すべき点を紹介しているファームもあります。BCGのホームページには、面接のプロセスと面接の際のTIPSも公開されており、役立ちます(BCGホームページ「面接準備と模擬ケース」)。各ファームの選考を受ける前に、ホームページを確認し、そこで言及されている内容をよく把握しておきましょう。

おすすめのケース面接対策本

ケース面接の対策は、対策本を精読して、繰り返し練習することが欠かせません。以下に、おすすめの書籍をあげますので、ご活用ください。

ビヘイビア面接(人物面接)

「人物面接は一緒に働きたいと思わせることが大切」のイラスト

ケース面接とあわせて、ビヘイビア面接が実施されます。ビヘイビア面接とは、ESや履歴書をもとに、候補者の価値観や人間性、適性、仕事やファームへの志望動機などを見極めるための一般的な面接です。

戦略コンサルの選考というと、ケース面接につい意識が取られがちですが、実際にはビヘイビア面接も重要です。ビヘイビア面接において「この人と一緒に働きたい」と思わせることができなければ、ケース面接を乗り越えたとしても、内定獲得は難しいでしょう。

面接前半のビヘイビア面接での評価が低いと、後半のケース面接で、面接官のコミュニケーションがきつく、落とされるということは珍しくありません。

ビヘイビア面接でよく聞かれる質問例

ビヘイビア面接における主たるテーマは、「志望動機」と「自己PR」です。シンプルな論点ながら、仕事への情熱、自己管理能力、リーダーシップ、他者への思いやり、成長意欲など、協働する仲間にふさわしい人物か否かが、さまざまな角度からチェックされます。

【自己PR・適性確認】

学生時代に力を入れて取り組んでいたこと/自分の強みは何か/苦労した経験は何か

 

【志望動機】

なぜ、戦略コンサルなのか/なぜ、このコンサルティングファームなのか

 

【志望動機の深掘り】

どのようなプロジェクトに関わりたいか/将来やりたいことは何か/人生のターニングポイントは何か

 

【質問事項】

(面接の終盤で)何か質問したいことはあるか

ビヘイビア面接の対策方法と注意点

ビヘイビア面接では、自分が伝えたいと考える「志望動機」と「自己PR(=資質)」を、常に意識しながら臨むことがカギとなります。たとえば、学生時代に力を入れて取り組んだことについて話す場合、一番時間を割いたことを単に回答すればよいわけではありません。どのような資質をアピールしようとしているのかという目的から逆算して、エピソードを整理しておくことが必要なのです。

志望動機を話す際、壮大な夢だけを伝えると「目の前の仕事に打ち込んでくれるのか?」と不安に思われるので、注意しましょう。「自分の想いを伝えることが大切だ」と主張する書籍や記事も見受けられます。しかし残念ながら、それらはあまり適切ではありません。

自分の想いを伝えることはもちろん大切です。しかし、ビジネススキルを持たない新入社員を、粘り強く育ててくれる採用企業の気持ちもよく考える必要があるでしょう。

当然のことですが、社会人として活躍するうえで、相手の気持ちや立場を考えることはとても大切です。面接では、そのような観点からも人物面が確認されています。採用企業にとって納得感のあるロジックで、ストーリーを組み立て、想いを伝えるようにしましょう。

また、自分の話し方や表情、しぐさが、受け手に与えるインパクトを意識して話すことも大切です。特に、ネガティブな印象を与えてしまうクセが出ないようにしましょう。自分では気づきにくいことなので、友人や先輩、あるいは長期インターン先の上司からフィードバックをもらうことも役立ちます。

あわせて、自分の面接練習の様子を録画して、確認することも効果的です。「リアクションが薄くて、相手が話しづらそうだな」「あいづちの打ち方がぶっきらぼうで、失礼な印象があるな」など、修正ポイントを把握して、面接に活かしましょう。

なお、これらの視点は「他人の目を気にして、それに合わせる」という発想とは、まったく異なります。戦略コンサルに限らず、「仕事」とは自分の能力やスキルを活用して、他者へ貢献することで、人々を幸せにしたり、社会をより良くしたりしていく活動です。他者への貢献が仕事のキーポイントとなるならば、自分の行動やふるまいが、他者に与えるインパクトについて配慮するのは、当たり前のことといえるでしょう。

コミュニケーションや人との関わり方を見直すことは、人生を豊かにします。プライベートにも大きな影響があるでしょう。就職活動は、自分を成長させるための好機でもあるのです。

もちろん、面接で身の丈以上にアピールしても、ベテランの面接官からは見抜かれてしまいます。仮に入社できたとしても、将来的には互いにとって不幸な結果となる場合もあるでしょう。あくまで、自分の資質や志望動機を「聞き手の気持ちをくみながら」「誤解のないように」「わかりやすく」伝えるということが大切です。

まとめ

面接に慣れていないうちは、緊張して頭が回らなかったり、伝えたいことがうまく伝わらなかったりするものです。模擬面接を実施したり、早い時期に行われる面接を受けたりすることで、場数をこなして慣れていくようにしましょう。

次回は、面接通過後に案内される「ジョブ選考」と「最終面接」の対策について解説します。

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著者プロフィール
渡辺 秀和
CareerPod編集長
渡辺 秀和
コンコードエグゼクティブグループ|代表取締役CEO
戦略コンサル、外資系企業の幹部などへ1000人を越えるビジネスリーダーの転職を支援したキャリア設計の専門家。「日本ヘッドハンター大賞」初代MVP受賞者。 著書:『未来をつくるキャリアの授業』(東京大学でのキャリア設計の教科書に指定)

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